「たとえ話」をうまくする2つのポイントは? 茂木健一郎が脳科学の視点で解説
脳科学者の茂木健一郎がパーソナリティをつとめ、日本や世界を舞台に活躍しているゲストの“挑戦”に迫るTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」(毎週土曜 22:00~22:30)。 TOKYO FMとJFN系列38局の音声配信プラットフォーム「AuDee(オーディー)」では、当番組のスピンオフ番組「茂木健一郎のポジティブ脳教室」を配信中です。この番組では、リスナーの皆様から寄せられたお悩みに茂木が脳科学的視点から回答して「ポジティブな考え方」を伝授していきます。 今回の配信では「たとえ話」に関する質問に答えました。
<リスナーからの相談>
茂木さんがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Dream HEART」で、株式会社STARTO ENTERTAINMENT代表取締役CEO・福田淳さんがゲスト出演されていた回を聴きました。 たとえ話がうまく、福田さんのお話が頭にスーッと入ってきました。人に何かを伝えるときにたとえ話のうまい人がいますが、何かコツがあるのでしょうか? 同じように、自分の考えをすぐに言語化できる人がいます。これは脳科学においてどんなポイントがあるのでしょうか?
<茂木の回答>
福田社長のお話、面白かったですよね。たしかに福田淳さんのたとえ話はお上手でした。たとえ話がうまくできるのには、2つのポイントがあると考えてください。 1つ目は、話し手のなかに明確なイメージがあるということ。これから自分が話そうとしていることは、“こういうことだ”というイメージがある。たとえ話が一番うまかった1人として、「イソップ寓話」を作ったとされる古代ギリシャのイソップという人がいます。 「イソップ寓話」の1つ「酸っぱい葡萄」では、ブドウを食べようと思ったら届かなくて悔しくて、「あのブドウは酸っぱいのだ」と思うキツネの話があります。自分が手に入らないものは価値がないと言ってしまう、そういった状況は人間もよくあります。キツネとブドウの話、酸っぱい葡萄の話は我々の記憶に残りますよね。そういうことを話すときに、イソップの頭のなかにはきっとはっきりとしたイメージがあるのです。 ですから、たとえ話がうまい人は自分の頭のなかにイメージがちゃんとあるのです。脳の言語野、言葉を出すところがちゃんと働いてくれることが第一です。 第二としては、実は「共感」が重要になってきます。たとえ自分のなかにイメージがあったとしても、それが相手に共有されなかったら意味がないですよね。 福田淳さんもそうなのですが、「この話は相手にどう伝わるのか」と、ちゃんと共感回路を働かせて、あらかじめ予測ができるわけです。「この人にこの話をしたらこういうふうに伝わる」という明確にイメージできるのが、たとえ話のうまい方の特徴なのかなと思います。 福田淳さんみたいに何か特別な能力がないと無理なのではと思われるかもしれませんが、これは訓練の仕方次第です。「明確なイメージを持つこと」と「共感回路をきちんと働かせること」がとても大事だという意識を持てば、きっとたとえ話がうまい方になるのではないかなと思います。 人工知能が発達してきている現在、たとえば就職するときや友達とコミュニケーションを取るときに、「コミュニケーション能力」が一番大事なことの1つになっていますよね。“たとえ話がうまい人”という“話し上手”な印象を与えると、世の中でうまくいくことも多いかなと思います。 (「茂木健一郎のポジティブ脳教室」配信より)