公立の伝統校・前橋商が無敗首位相手に健闘。支援も後押しに初のプリンス関東で成長を続ける
[6.22 プリンスリーグ関東2部第7節 前橋商高 1-5 山梨学院高 前橋商高G(MAESHO FOOTBALL PARK)] 【写真】「なんと!」「こんなかわい子ちゃんが…」ユニ姿で連番観戦した“美女2人”に脚光 最後は個の力で突き放されてしまったが、前橋商高は新ユニフォーム初戦で印象的な戦いを見せた。立ち上がりに相手の背後を取る形で2度の決定機。これを活かせず、逆に失点するスタートとなったものの、その後は守りから立て直す。 2年生7人が先発した前橋商は球際で苦戦してなかなかボールを奪い切ることができず、ゴール前で判断が遅れて競り負けるシーンも。だが、シュート、ラストパスへ持ち込まれても、DF陣が最後まで粘り強く身体を寄せていた。そのサポートもあり、GK蜂巣煌英(2年)がシュートセーブ、1対1、クロスの対応と安定したパフォーマンス。1点差を継続した。 ボールを奪うと、前から奪い返しに来る相手を見て、ロングボールを活用しながらの攻撃。182cmの10番FW井上泰(3年)が高さで優位に立っていたこともあり、シンプルに押し返しながらチャンスを伺った。 前半終盤には、GK蜂巣とCB新井大樹(3年)を中心としたDFラインで山梨学院高のプレッシャーを剥がして中盤、前線へ縦パス。そこから、持ち味のショートコンビネーションで相手の守りを攻略した。ハーフスペースでボールを引き出し、決定機に絡んだMF櫻井聖那主将(3年)は「ボールが収まらない時に自分がフリーになって、ちゃんと収めてマイボールにするっていうのが今日大切にしてたことで、それは流れが悪い時とか、自分で収めてちょっとでも前に運んだりして、自分たちの攻撃の流れは自分では作れてたかなと思います」と振り返る。 だが、無敗首位の山梨学院はGK、DF陣が際のところで差をつけてくる。前橋商はシュートブロックされるなど決めきることができない。後半8分、井上が自ら獲得したPKを止められると、直後に守備が緩くなった隙を突かれて失点。それでも、17分に櫻井が味方2トップの動きを活用してPAへ侵入する。そして、ゴール前でのアイディアを特長とするMFは巧みなボールコントロールでPKを獲得。これを左SB廣田凌星(3年)が左足で決め、1点差とした。 だが、後半30分からの3失点で初勝利には届かず。櫻井は「だんだん改善はできてきている。もっと細かいところを次は突き詰めていかないと勝てるようにはならないと思うんで、そういうところはもっと練習から全員で話し合ったりして、どんどん良くしていきたい」と語った。 かつて2年連続の全国高校選手権3位や全日本ユース(U-18)選手権準優勝、Jリーガー23人を輩出した実績を持つ前橋商は、昨年まで群馬県1部リーグに所属。昨年の同リーグで優勝し、参入戦で日大藤沢高(神奈川)、帝京三高(山梨)という私学の強豪校を倒して初のプリンスリーグ関東2部昇格を果たした。 参入1年目の今年、当初はスピード感、強度に戸惑った。だが、経験、準備を重ねたことによって1試合の中で狙いとすることを表現する回数が明らかに増えてきている。笠原恵太監督が、「選手にとっても、我々(指導者)にとっても凄く勉強になっています。練習も一生懸命やってくれています」というプリンスリーグ関東で戦う機会を来年以降も残さなければならない。 笠原監督は就任から目標にしてきたというインターハイ出場、選手権出場、プリンスリーグ関東昇格を実現。2023年2月には、校内のグラウンドが全面人工芝になった。そして、この日から、「株式会社オープンハウスグループ」と「医療法人 高徳会 上牧温泉病院」のロゴの入った新ユニフォームを着用(リーグ戦用)。県立校で活動費が限られている中、群馬県内の公立高校サッカー部が企業から支援を受けるのは初めての取り組みとなる。 櫻井は「自分たちとしては、もうもっとやんないとっていう向上心に繋げられたんで、良かったと思います」と語り、井上は「(応援してくれる人たちの)名に恥じないように、勝ち切りたいと、改めてそういう気持ちが強くなりました」と前を向いた。人工芝グラウンド、企業からの支援、またOB会主催の練習会(中学3年生対象、24年初開催)と将来、前橋商に進学してくる選手たちが本気で私学勢に対抗し、本気で全国大会出場やプロを目指せる環境作りが続けられている。 今年はインターハイ予選準々決勝で試合終了間際に2失点。全国大会への道を閉ざされ、プリンスリーグでも結果が出ていない。だが、櫻井は「今年はプリンスまだ7節で0勝ですけど、ここから残留を目指して頑張っていきたい。選手権は、このインハイ、プリンスの結果を覆して優勝できるようにやっていきたい」。次世代のためにも目標へ向けて努力を重ね、群馬の公立校でもできることを証明する。