M&A仲介大手「全社株価急落」の深い理由、高額手数料や悪質ダイレクトメールにメスも
こうした問題は以前から指摘されてきた。大手仲介事業者らでつくる「M&A仲介協会」は、昨年12月に自主規制を定めている。そこには「構造的にいずれか一方の依頼者との間で利益相反のおそれが生じることも説明しなければならない」といった内容が含まれている。 それもあってか、関係者の一部では「政府が規制強化に乗り出すにしても、あくまで既存の自主規制に沿った内容になるはず」と楽観視する声もある。実際、今回の改訂版案に明記されている「手数料体系の開示」などはすでに自主規制に含まれている内容だ。
■高額手数料の維持は困難か ところが、改訂版案には自主規制にはない新たな規制を示唆する内容も含まれている。仲介事業者が受け取る高額な最低手数料を問題視する記述だ。 改訂版案の参考資料によれば、500万円や1000万円の最低手数料を設定している事業者が多く、なかには2000万円や2500万円に設定している事業者もあるようだ。 「料金体系の開示だけならインパクトはないが、最低報酬(手数料)の極度額にまで踏み込まれたら、仲介事業者のビジネスの根幹が崩れかねない」。前出の業界関係者はそう不安をにじませる。
現在、仲介事業者に対する業法は整備されておらず、中小企業庁が策定した「中小M&Aガイドライン」や自主規制がルールブックになっている。中企庁では「中小M&Aガイドライン見直し検討小委員会」による議論が進んでおり、ガイドラインにどのような規定が盛り込まれるかが焦点になる。 ガイドラインに法的拘束力はないが、2021年に中企庁が創設した「M&A支援機関登録制度」では、登録事業者が「事業承継・引継ぎ補助金」を受給できる一方、ガイドラインから逸脱すると登録除外となる仕組みが取り入れられている。つまり補助金によって、事実上の拘束力をガイドラインに持たせているわけだ。
中企庁の担当者によれば、ガイドラインの見直しに当たり最低報酬にまでは踏みこまないものの、「自主規制の範疇を超える手数料体系の開示」を検討しているという。 顧客に対して手数料を開示するだけではなく、それぞれの手数料に対応するサービス内容について細かい説明を求めるものだ。最低手数料にメスが入ることは避けられそうだが、手数料体系の透明化によって従来の水準を維持できなくなる可能性がある。 ■M&A総研の下落率が高い理由