大卒3年目で待望のプロデビュー「勝たせられなくてごめん」橘田健人、佐々木旭らから寄せられた言葉に人間性が滲み出る川崎GK早坂勇希の記念すべき瞬間
3失点で敗れたが
[J1第27節]川崎 1-3 横浜/8月17日/Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu 【動画】川崎×横浜ハイライト 27節に行なわれた川崎と横浜の“ビッグ神奈川ダービー”。注目の一戦で話題を集めたのは、大卒3年目で、待望の公式戦デビューを果たしたGK早坂勇希だ。 川崎アカデミー出身で、桐蔭横浜大を経て2022年に川崎に帰還。「エリート」と同じ経歴を辿る後輩の山田新から称される存在だったが、チョン・ソンリョンら偉大な先輩がいるなかで、なかなか出場機会を得られずにいた。 しかし、この日はチョン・ソンリョンのコンディション不良と、数日前の上福元直人の移籍も重なり、急遽、先発を言い渡されたのだ。チャンスとはこういう時に巡ってくるのだろう。 常にトレーニングに真摯に取り組み、ベンチ入りしたゲームでは誰よりも声を張り上げ、チームのために働く。その姿を知っているからこそ、待望のデビューに観ている者は大きな感慨深さを抱き、チームメイトは早坂のためにも勝ちたいと思いを共有した。 だからこそ連勝が3でストップし、1-3で敗れたことを選手たちは残念がる。 桐蔭横浜大の先輩であるMF橘田健人は振り返る。 「勝たせたかったなと。申し訳ない想いですね。試合に出られない時も、しっかり自分がやれることをやっていたので、やっぱり彼を勝たせたかった。(試合前には)いつも通りで良いよ、焦らなくて良いよと声をかけていました」 さらに同期入団のDF佐々木旭も悔いる。 「人一倍努力していたのは見ていましたし、最近ベンチに入った試合でも誰よりも声を出してやっていたので、同期でやっと同じピッチに立てたのはすごく嬉しかったですし、だからこそ勝って笑顔で一緒に写真を撮りたかったなというのはありますね。先発は今日(試合当日に)知ったのでびっくりしましたが、緊張していたはずのなかで、90分を通して後ろから誰よりも声をかけてくれて、心強かったですし、また一緒のピッチに立てるように頑張りたいです」 もっとも3失点したとはいえ、アンデルソン・ロペスのPK、西村拓真のスーパーミドル、畠中槙之輔の技ありのヘッドと、どれも止めるのは難しいものだった。名手、A・ロペスのPKにはよく反応したとも言え、それ以外でも冷静に対応。 確かにフィード面ではより工夫が必要だろうが、ペナルティエリアを出て、CB陣とポゼッションに加わる姿もあった。 「ずっと公式戦のピッチを目指してトレーニングを積み重ねてきたので、自信をもってプレーすることを心がけていましたし、自分にできることを一つひとつやろうと思って試合に入りました。PKのシーンは触っていたのでなんとか弾いて結果を残したかったです。3失点しているのでGKとして責任を感じていますし、自分のキックで流れを変えてしまったところもあるので反省しなければいけないと思います」 当の本人はデビューに浮かれることなく、自らにベクトルを向け、「早坂のデビュー戦を全員で勝とう」という鬼木達監督の呼び掛けや、チームメイトたちの心遣いに感謝を口にする。 その姿に彼の人間性を改めて感じつつ、大事なのはこの経験を今後にどう活かすかだろう。ここからは、プロデビューを果たしたひとりの戦力としても判断される。記念すべき試合を終え、彼がどんな姿を見せてくれるか楽しみだ。 取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)
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