「八百万の神々」入門 第5回:もっと知りたい日本の神様:人間に近い存在、「付き合い方」は人それぞれ
“かかりつけ医”と“専門医”
JS 昔から日本には、季節の折々、生活のさまざまな場面で、神の恵みに感謝する風習、行事があります。現代社会にもその風習が息づいていると言えますか。 平藤 風習をできるだけ守ろうとする人もいれば、もっと気楽に、柔軟に考える人もいます。今は、願いごとがあるときだけ、あるいはお正月だけ神社にお参りする人が増えていることは確かです。 JS 神様にはそれぞれご利益があります。例えば、お店をやっている人は、商売繁盛のご利益のある稲荷神社や恵比寿神社に行きますが、サラリーマンはどの神社にお参りすればいいですか。 平藤 江戸時代までは、同じ場所で生まれ育ち、死んでいく人が多く、その土地の神社が一生付き合っていく神社でした。でも今は生まれた土地と育つ土地、住む場所と働く場所が違う人が多いでしょう。住んでいる地域、または職場がある地域の氏神神社に、仕事がうまくいきますようにとお参りするのが一般的なのではと思います。 JS どんな神様を祭っているかはあまり関係ないのですか? 平藤 私は、氏神は“かかりつけ医”みたいなものだと考えています。何か特別なことがあるなら、“専門医”に行けばいい。例えば、合格祈願は学業の神様、良縁成就は縁結びの神様と、スペシャリストを祭る神社にお参りするでしょう。 JS 私が住む埼玉県には、スサノオを祭る氷川神社がいくつかあります。同じ地域に複数あるだけでなく、全国にもあるのはなぜですか。 平藤 氷川神社は「川」の字を使っていることもあり、自分たちの住む地域を水害から守りたい、あるいは、水の恵みがほしいといった理由から、関東のいろいろな川のそばに置かれました。さらに、数キロ先までお参りに行くよりも、もっと近いところにあるといいという具合に、いろいろな場所に作られました。氷川神社だけでなく、神社はそうやってどんどん増えていったのです。 JS 複数の神社が同じ神様を祭っていて、いったい神様はどこにいるのでしょうか。 平藤 神様は神社に住んでいるわけではありません。いろいろなところに宿り、神社に宿ることもあれば、山に宿る場合もあります。例えば、アマテラスは伊勢神宮にしかいないわけではなく、彼女を祭神とする全国の神社の本殿にも宿ります。