米大統領選2016(中)「クリントン独走」に陰り 8年前の再現も?
アメリカ大統領選挙の民主・共和両党の指名をめぐる予備選段階がいよいよ2月1日(日本時間2日午前)のアイオワ州党員集会からスタートします。2回目の今回は「クリントン独走」という構図が大きく変わりつつある民主党予備選の動向を検証します。「社会民主主義者」サンダース氏が若者の支持を集め始める中、クリントン氏には“2008年の影”がちらついているかもしれません。(上智大学教授・前嶋和弘) 【図】2年がかりの米大統領選 なぜこんなに長い選挙を行うのか
「社会民主主義者」サンダースに若者熱狂
民主党指名争いで、バーニー・サンダース上院議員の勢いが目立っています。トップを走ってきたヒラリー・クリントン前国務長官の組織力は強固ですが、若者たちの熱狂はサンダースの方にあります。 秋口以降の全米各地の大学内で企画されたサンダースの講演はどれも満員の大盛況で、中には講演を聞くために徹夜で学生たちが並んで待ったケースもあったといいます。一部を除き、アメリカの大学はどちらかと言えばリベラル派が優勢であることもあって、予備選開始を前にしてサンダース一色のキャンパスも少なくありません。アメリカの若者は民主、共和両党の候補者で最高齢となる74歳に圧倒的な声援を送っています。 何が若者をサンダースに熱狂させるのでしょうか。それは、「格差是正」「反ウォール街」「反戦」といったサンダースが訴えるメッセージにあります。いずれも、リベラル派の若者にとっては心が躍るものばかりです。 1980年代初めから、市長、下院議員、上院議員と30年以上の政治経験はあるものの、サンダースは究極のアウトサイダーといえます。なぜなら、自らを現在は民主党で立候補しているものの、自らを「社会民主主義者」と呼び、これまでずっと無党派を貫いてきたためです。1991年からの下院議員、2007年からの上院議員時代には、議会の中での最左翼としてイラク戦争に強く反対し、富裕層向け減税に反対してきました。反戦運動と公民権運動にのめりこんだ1960年代のシカゴ大学での学生時代から政治姿勢はほとんど変わっていません。 昨年秋に渡米調査した際にうかがった大学生の民主党支持の政治団体のメンバーたちは「サンダースしか現状を変えてくれそうな候補はいない」「年齢は全く感じさせず、若々しい」などと言っていました。現在のリベラル派の若者たちは、50年前にタイムスリップした自分たちを見る目でサンダースを見ているのかもしれません。年齢は重ねても主張は永遠に若者のままであるサンダースは年齢を感じさせない若さにあふれています。