天国の父の思い受け継ぐ 創業100年、読谷村の台所「池城ストアー」 【どローカルリポート】沖縄
年の瀬も迫り、読谷村喜名の「池城ストアー」は繁忙期を迎えている。総菜や弁当、正月のごちそうの「スーチカー(豚の塩漬け)」を求め、客足は絶えない。創業100年の歴史があり、読谷村の台所として愛される「まちやぐゎー(商店)」だ。今年、先代店主の屋良朝盛(ちょうせい)さんが病で亡くなり、娘の朝香さん(26)と息子の朝飛(あさひ)さん(26)の5代目へと受け継がれた。2人は「祖父母や父が大切にしてきたこの店を守っていきたい。天国から父も見守ってくれていると思う」と空を仰ぐ。 【動画】天国の父の思い受け継ぐ 創業100年、読谷村の台所「池城ストアー」 【どローカルリポート】沖縄
池城ストアーは屋号の「いちぐしく」で親しまれ、村内にとどまらず県内外から客が訪れる。朝香さんの祖母・千代子さん(86)と祖父・朝正(ちょうしょう)さん(87)から父の朝盛さんへ店は引き継がれ、県産品や総菜の品ぞろえが豊富な人気店で知られる。開店の午前5時から午後8時半の閉店まで多くの客でにぎわう。 スーチカーは一晩塩漬けにした豚の三枚肉や肩ロースをゆで上げ、絶妙な塩加減がくせになる店の一番人気だ。贈答品や正月料理として、この時期は通常の5倍、1日に300キロ近くを調理する。 今年7月、朝盛さんががんのため62歳で亡くなった。朝盛さんは客やスタッフに心配をかけまいと余命宣告を伏せ、亡くなる2週間前まで店に出ていたという。朝香さんは「弱ったそぶりを見せなかった。人の人生の倍を生きているような忙しい人だった」と振り返る。幼少の頃より、店の手伝いに駆り出されることが多く、学生時代はきょうだいそろって「店が大嫌いだった」と笑う。
朝飛さんは看護師の仕事を辞め店を継いだ。「父の代わりを2人でなんとか果たせている。これまでの店の『味』を大切にしつつ、新しい感覚を取り入れて今の時代にあった店に発展させていきたい」と意気込む。3代目店主の祖母・千代子さんは「孫が継ぎ、うれしい。私が百歳までは大丈夫。安心して見守っていられる」と目を細める。 店を受け継ぎ8月の旧盆からバタバタと年末を迎えた。「悲しんでいる余裕もなかった」と2人は手探りでの営業に追われてきた。SNSの情報発信など、若い世代の取り組みも充実し始めている。「父たちの人脈、スタッフとの絆に助けられ、お客さんや取引業者から多くの学びがあった毎日。改めてみんなに愛されている店と知った。まずは父を目標に、その先は祖父母を超えられるよう、がんばりたい」ときょうだい2人で手を携え、天国の父に飛躍を誓う。
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