競争率6倍…「地域中核・特色大学」の12校はなぜ選ばれたのか
文部科学省の「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J―PEAKS)」で、初回の採択案件が走り出した。研究と経営を連動させた大学改革で、競争率6倍を乗り越えた国立9、公立1、私立2の12校だ。両輪の事業とされる「国際卓越研究大学」は10校が挑戦するも、初回認定候補は東北大学のみとあって、先に具体化するJ―PEAKSに注目が集まる。各大学はなぜ国際卓越でなくJ―PEAKSを選んだのか、どのような計画が評価されたのか―。5校の事例から浮かび上がらせる。(編集委員・山本佳世子、札幌・市川徹) 【一覧表】「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J―PEAKS)」に採択された12件 「J―PEAKSの国立大学の採択は順当だったのではないか。運営費交付金配分のグループ分けのうち、指定国立大学に次ぐ『グループ5』の7大学は、いずれも採択された」。千葉大学の藤江幸一理事はこう振り返る。7大学とは北海道大学、千葉大、東京農工大学、金沢大学、神戸大学、岡山大学、広島大学のことだ。 2015年頃、当時の国立大は文科省の施策に基づき、教育研究の中心的役目として世界、地域、特色の「三つの枠組み」からいずれかの選択を迫られた。各大学の機能の特化・強化が進む転機だった。その後、大学病院の有無での見直しや、指定国立大学制度の開始があり、現在は六つほどのグループに分かれている。 研究で最上位なのが指定国立大10校のグループで、国際卓越研究大学には昨春、文科系の一橋大学を除いてすべてが応募した。グループ5は自他共にこれに次ぐと意識していただけに、「本学だけが不採択とならずによかった」と藤江理事は胸をなで下ろした。 もちろん“出来レース”ではなく、別のグループの信州大学と東京芸術大学が食い込み、さらに公立1校、私立2校のバランスになった。事業の特色として「拠点整備が進む強みの研究テーマを伸ばす」「社会実装やスタートアップ輩出などを通じて、社会の理解と資金を獲得する」「大学間連携を推奨」などがある。どこに重点を置くかは案件により違いがある。