メジャーの本塁打王は夢の出来事。大谷翔平のパワーは規格外ですよ【デーブ大久保 さあ、話しましょう!】
こんな打者がうちのチームにいてくれたらなあ。「あこがれるのをやめましょう」と言えるようなチームリーダーの要素も持ち、足も速い。そう思ってテレビを見ていたのが大谷翔平です。先日、シルバースラッガー賞を受賞しましたね。しかもア・リーグの本塁打王に輝いたのですから、すごいの一言です。 【選手データ】大谷翔平 プロフィール・通算成績 私は、本当に自分が死ぬまで、MLBで本塁打王を獲得する日本人選手が出てくると思っていませんでした。巨人時代に一緒にプレーした松井秀喜(元ヤンキースほか)が、年間40本塁打以上打てなかったのですから……。それを大谷は一気に超えて今季44本塁打。2度目の40本超え。とんでもないバッターですよ。 何がすごいのか、というと一番は何といっても「パワー」です。言ってしまえば技術を超越したパワーを持っているんです。完ぺきな打撃フォームで打った本塁打はそこまで多くありません。タイミングを外されて、少し泳ぎ気味だったり、少し詰まらされたりしたバッティングのときでも、パワーでスタンドまで持っていきます。あのメジャーでそれができるんですから、われわれプロ野球を経験した解説者からしても、なかなか説明できないほどです。 しかもそのパワーが、欧米人、中南米人のそれをもはるかに超えている点です。東南アジア系の人間は、骨格的な部分で筋肉の付き方が違うので、パワーで劣るとも言われてきました。それをはね返してMLBの中でのトップ中のトップのパワーを持つ選手になっている。これは本当にすごいことなので、日本人として誇れるのです。 そこに人柄まで付いてくるのですから、もう本当に……。先日、日本の全小学校にグラブを各3個ずつ寄贈するという報道がありました。こんなすごいことを彼は思いつくのか、と感心しました。これも大谷がやるから、何の嫌味もないのです。もし、デーブ大久保が同じことをしたら「売名行為をしてんじゃない!」なんて絶対に言われますよね。そういうタイプの人間なので(笑)。 なぜ大谷はそういうことを言われないのか。すべては人のために動いているように見えるからです。ファンが喜ぶために、チームが勝つために、という姿勢が見てとれますよね。それだけ「徳を積んでいる」のだと思います。曼荼羅シートの件も有名ですが、日々徳を積めば、その徳が自分のところにはね返ってくるのだと思います。 今回も、グラブ寄贈することでどれだけの小学生が喜ぶのでしょうか。その笑顔が大谷によってもたらされ、それが大谷のパワーにもなる。私が小学生のときに、もし長嶋(長嶋茂雄)さんや王(王貞治)さんから同じように寄贈されたら、もう飛んで喜びます。そういう子どもたちのパワーを、今度は大谷がもらって、また素晴らしいプレーを見せる。まさに運がループしているように見えるんです。
週刊ベースボール