アジャコングが明かす、ブル中野からベルトを獲ったあとの苦悩 今はリング上で相手と「会話」をしながら闘う
【全女は「クソみたいな会社だったけど、恨みはない」】 ――Netflixの『極悪女王』をきっかけに、全女の"異常さ"がフィーチャーされました。アジャ選手から見て、全女はどんな団体でしたか? アジャ:『極悪女王』の100倍くらいスーパーブラックな会社でしたね(笑)。ドラマではあれくらいしかできないだろうな......。「長与千種 還暦祭」で長与さんが「全女は大嫌いだけど、大好き」と言ってたように、本当にどうしようもないクソみたいな会社だったけど、不思議と恨みはないんですよ。あんな会社でやれたんだから、世の中で怖いことなんて何もないなと思うし、ある種、あんなに面白い会社はなかったとも思うんですよ。全女で育って、ある程度、名前を残させてもらった人間たちからすると、「大嫌いだけど、大好き」が共通項になると思います。 ――どんなところが大嫌いで、どんなところが大好きですか? アジャ:人としては最悪だと思うんですよ。会社としてのやり方も本当にチャランポランだし、「よく株式会社を名乗ったな!」って思うくらいです。でも、だからこそ私たちも好き勝手にできたし、私たちが少し生意気なことを言っても、お金を生み出している限り、あの人たちはクビを切らないし文句を言わない。20歳やそこらの小娘が「うるせー、クソジジイ!」って言っても許されるんです。 ――そんな関係だったんですね。 アジャ:会社とはしょっちゅうケンカしてました。「ふざけんな!」と言って事務所を出ていく、といったことは日常茶飯事。普通、そんなことを社長たちに言ったら、即クビですよね。それでも、お金を生み出す人間たちに関しては、笑って許してくれる会社だった。寛容......ではないか(笑)。対等でいられた会社ではありました。
【リング上で相手とする会話】 ――全女を退団してフリーになってから、長与さん率いるGAEA JAPANに参戦されます。2001年12月15日、里村明衣子選手とのタイトルマッチに敗北し、AAAWシングル王座を失いましたが、里村選手はその数日後の会食でひと言も話すことができず、「こんなのチャンピオンじゃない!」と思ったそうなんです。アジャ選手から見て、当時の里村選手はまだチャンピオンの器ではなかったですか? アジャ:チャンピオンの器というのは、チャンピオンになってからできるんです。私も中野さんからベルトを取った時は、"チャンピオンになるくらいの実力はついた"というだけで、そこからのチャンピオン像とかチャンピオンの器は、自分で作っていくしかなかった。チャンピオンになってから器が作れなかった人は「その器じゃなかった」と言われるだけですし、きちんとしたものを作っていけば、「器のデカいチャンピオンだったな」と言われる。明衣子はベルトを取って早々に「チャンピオンの器じゃない」と思ったとのことですが、そもそもまだ器がないんですから。 プロレスのチャンピオンって言ったって、世間の人は誰も知らない。「プロレスのチャンピオンです」と言ったところで、「へえ、それで?」となってしまう。でも、チャンピオンとしての器を自分がちゃんと作っていくことで、「この人ってすごいチャンピオンなんだな」と思わせることはできます。器は自分で作るものだと思いますね。 ――アジャ選手は誰と闘っても名勝負にしてしまうレスラーだと思います。どうすればアジャ選手のように、対戦相手の力量や相性などに左右されないレスラーになれるのでしょうか。 アジャ:手が合う、合わないというのはあるんですけど、手が合う人との試合だから名勝負になるとは限らない。井上京子とやっている試合では、「こいつはたぶんこう来るから、三手先でこういってやろう」って先の読み合いをするのがすごく楽しい部分ではある。でも、逆に堀田(祐美子)選手などはあんまり手が合わなかったですけど、手が合わないなら合わないで、ケンカすりゃあいいだけの話なので。お客さんが見たいものは"闘い"。それならば、その人に合った闘いをすればいいだけじゃないかなと思います。