週刊文春を装い大谷翔平の取材を持ちかける…警視庁が警告する「高額バイト詐欺」
拡大する高額アルバイト
男性はここでやり取りをやめた。多くの人は同様に途中で詐欺と気付きそうだが、警視庁によると、こうした「高額アルバイト」の詐欺被害は拡大しているという。 その一例は、「消費者金融から金を借り、その額に応じて報酬が払われる。会社が返済するため、個人の債務にはならない」として借金と引き換えに「報酬3万円」をもらうが、借金はそのまま残り、後に消費者金融から返済が求められるという詐欺。 また、高級な時計や宝石など高額商品の買い付けアルバイトというのも詐欺の手口に多く、言われたとおりに買って商品を送ったのに「代金と報酬が支払われない」という被害に遭ってしまう。 あらゆる手口が広がる中、大谷翔平までもが詐欺に使われる始末だが、今回の「取材手伝い詐欺」は、タイムリーな情報を必要とするマスコミの特性を見たか、わずか9日後の渡航を求めるスピード感で、受信者の考える余地を極力、与えないようにしている。仕事をせず旅行をしてしまう人がいるから旅費を前払いさせる、というのも納得してしまいそうな理屈だ。 ただ、実際には、メディアがこれほど高額な報酬を払ってまで、まったくの取材素人を現地に行かせるというのは、まずありえない話だ。プロの記者にですら日給5万円以上で海外のスポーツ取材なんていうのは聞いたことがない。 もっと雑誌が売れていた十数年以上前なら、その額自体はありえたが、それでも著名人を直撃できるぐらいの敏腕記者に限られた。ちょっと考えればマスコミ関係者でなくても分かる話だが、高額アルバイト詐欺の場合、「日給5~8万円」などと大きな金額で釣り、思考力を奪うところもある。 今回の詐欺では、発端のXアカウントがそもそも怪しいという点もあった。中国名のアカウントは、「若いときに誰かを好きになったなら、思いっきり、その人を愛してくださいね」という意味の中国語文などとともに、セクシーなコスプレをした女性の写真が4度投稿されていただけ。 いずれの写真も同じ部屋、同じ衣装で撮られたもので、5月2~5日の投稿のみ。いかにも急造アカウントといった風で、それを見ればかなりの怪しさは伺える。 しかし、こうした未熟な点も年々、精度を高めていっているのが昨今の詐欺グループ。「こんなのに引っかかる人がいるのかよ」と言っている人が、あとに罠にハメられた、ということもあるので注意が必要だ。
片岡 亮(フリージャーナリスト)