【こんな人】オリックス佐藤一磨プロ初勝利 身長高いが、腰は低く深々お辞儀 いつも縁を大切に
<こんな人> <日本生命セ・パ交流戦:オリックス4-1巨人>◇9日◇東京ドーム オリックス佐藤一磨投手(23)が4年少々の育成契約の下積みを経て、ついに1軍の舞台に立った。 横浜スタジアムで撮影した1枚の写真が印象的だ。約5年前、横浜隼人(神奈川)時代に行われた横浜商大高との“引退試合”だ。 県内でも特に野球部員数の多い両校は、夏の大会でベンチ入りできない3年生が大勢いる。彼らが「高校野球を頑張ってきた成果」を出す舞台としてもう20年以上、行われている。 6月27日の引退試合の時点で、すでに佐藤が背番号1で夏のメンバーに選ばれることは決定的だった。横浜スタジアムのベンチには物理的に何十人も入れない。引退試合はスタンドから応援した。 ただ、感極まったのか。途中からベンチに参入した。仲間の肩を抱いて大声を出し、食い入るように全てのプレーを見ていた。表情や所作が、その純粋な性格を物語っていた。 高校時代の佐藤と会話をしたのは、引退試合の時とあと1回だけ。だから驚かされた。育成選手でのオリックス入団が決まった、翌年1月のNPB新人研修。ロッテ佐々木朗希投手や、アマチュア野球担当として面識のあった選手たちとあいさつを交わした。 会場内で突然大きな人影が動いて、私の前で立ち止まった。「横浜隼人高校から入団しました佐藤一磨です。あの時はお世話になりました」。青春のほんの一瞬に交点があっただけの相手に、わざわざあいさつに駆け寄り、立ち止まってお辞儀してくれるなんて。 横浜隼人のグラウンドでは今も「こんにちは、ありがとうございます」と野球部員から来客への真心が響く。礼儀を徹底して仕込まれる高校とはいえ、佐藤の姿はグッと来た。私たちのやりとりを当時から早くも有名だったルーキーたちが見ていた記憶がある。 翌年以降、ロッテ担当や西武担当として毎年2月、オリックスのキャンプ地の宮崎・清武に行った。行くたびに佐藤が「お久しぶりです!」とわざわざ声をかけに来てくれるから、2年目以降は互いに探すようになった。 身長はとても高いのに、腰はとても低い。若くして誠実で純粋な姿に、自然と人が集まる。母校の水谷哲也監督(59)は「地球とボールとご縁はまるい」とよく口にする。縁の輪を大事にしてきた若者の、長い下積みを経てのプロ初勝利。スタンドで父が深々とお辞儀をする姿が、テレビに映った。【金子真仁】