【ラグビー】「あらためてその存在の大きさに気づく」。「嘘だと思っている」。堀江翔太引退へ、周りの反応いろいろ
「素晴らしいキャリアを重ねるほど(身を引く)潮時が難しくなりますが、その意味では彼はいい位置にいる。このシーズンを悔いの残らないようにしてくれれば」 堀江はワイルドナイツで2013年度から4季、主将を務めている。2014年就任のディーンズにとっては、このクラブを率いるようになって最初に手を組んだ主将である。当時は伝統的な堅守速攻のスタイルをブラッシュアップすべく、防御の出足をよりシャープにさせていた。指揮官の述懐。 「チームのラグビーをそれまでと違う風にすべく、一緒にクリエイティビティを担っていました。私自身、楽しくできました。常に進化しなければいけないことが難しいところなのですが、彼はそれを達成し続けていた。相手チームに分析されるなかでも、自分のパフォーマンスを発揮していた」 続けるのは、生けるレジェンドを賞賛する言葉だ。日本代表がワールドカップで結果を残してきた歴史の流れに堀江がいたと、再確認させる。 「いるチームをそれまでになかった最高の地位に持ち上げた選手。2015年のブライトンでの勝利(イングランド大会初戦で南アフリカ代表を制した)、2019年の日本大会での決勝トーナメント進出…。合計4度のワールドカップ出場は素晴らしいことです。さらに彼は、ファンの皆さんがわからないところで、すごく多くの仕事をしています。身体やマインドをどう管理するかに力を入れていて、プライベートと仕事のバランスもよく取っています」 若き日の堀江の背中を追ってきたひとりに、左PRの稲垣啓太がいる。 2013年度のトップリーグで新人賞に輝き、2014年以降は日本代表に入って不動の存在となった通称「笑わない男」。今回の報告を受けて言った。 「(ワイルドナイツに)入った時から背中を見て育ちました。偉大な人がチームから去る。皆、あらためてその存在の大きさに気づくんじゃないでしょうか。誰にでも終わりはある。ラグビーができる時間は無限じゃない。そう実感したと思う。ロビーさんも言っていました。『本来いるはずの人間がチームを去る時が来る。誰にでも起こりえる』。その瞬間、皆の表情は違う感じがしました」 ワイルドナイツに入ってからの約3年は、よく堀江に「怒られていた」。先輩の「立て!」という叱咤を肝に銘じ、グラウンドに倒れている時間を減らすようにした。一緒にいるだけで、自身のスタンダードを引き上げてもらえた。 何より堀江自身が先んじて海外に出たり、年齢を重ねてもなお向上する姿を示したりと、その一挙手一投足で周りに刺激を与えていた。稲垣は続ける。 「色んなチームの人間が堀江さんをリスペクトしているでしょう。日本のラグビーの基盤を気付いたイメージが、僕の中にある」 稲垣も松田と同じように、堀江のラストシーズンによい結果を残したいと思っている。ただ、その気持ちをわかりやすく表現することはなかった。あえて、そうしなかったのだろう。 「それ(内なる思い)を口にするか、というのは別な話です。しっかり目の前の試合を勝って、それを積み重ねていって、最後の最後に、去年の悔しさを忘れないで持っていたら、それでいいと思います。そして最終的に結果が出た時に、あぁ、堀江さん、よかったねという風になればいいんじゃないかと。堀江さんもそういう気持ちでしょう」 昨季はプレーオフ決勝で敗れている。雪辱を果たすための第一歩として、12月10日のホストゲームをにらむ。 (文:向 風見也)