「ここはアメリカンドリームが実現できる街」歌舞伎町、夜だけ営業するケーキ店に連日行列ができるワケ
集まるのは歌舞伎町の中でカルチャーが「完結」している多種多様な人々
ケーキを提供するカフェは多々あるけれど、オーダーが入ってから仕上げる店は聞いたことがない。味も見た目もアイデアも絶品。青山や表参道でも十分勝負できると思うのだが……。 「歌舞伎町に抵抗のない若い女性がターゲット、というのがコンセプトなんです。渋谷にも若い女性はいますが、学生が多い。池袋にいるオタクの女の子たちは推し活にはお金を使うけれど、ここは推し活メインのカフェをやりたいワケではないですし。 青山や表参道のような、もう出来上がった街にお店を出しても数あるお店の一つにしかならないけれど、歌舞伎町でケーキ屋さんを立ち上げたら唯一無二なので、みんなここに集まってくるし、街の活性化にもなるかなと思って」 客層はさまざま。新宿を拠点にしている人たちが「たまには美味しいもの食べたいよね」と立ち寄ってくれる。そういう人たちはあまり青山や表参道には行かず、歌舞伎町の中でカルチャーが完結しているところにもまたニーズがある。なかなかすごいところを狙っているのだ。 「新大久保が近いので、かわいくて映えるお店を探す人もよく来ますし、普通に食べ歩きが好きな女性をはじめ、コンカフェ嬢さんとかインフルエンサー活動をしてる方も来てくれます。 意外なことに男性のリピーターも多いですし、一人で立ち寄る方も少なくないです。Googleの口コミを見て、インバウンドの方もよくいらっしゃいます」 取材中も岳野さんに挨拶に来た常連さんが「今日はケーキと一緒に撮るために、この子を連れてきました」とクマのストラップを見せてくれた。岳野さんの人柄に惹かれるお客さんも多いようだ。 そして集まってくるのはお客さんだけではなく……。 「パティシエさんってすごく素敵なお仕事ですけど、過酷な労働条件で働いてる人も多くて、うちのパティシエの中にも何人か、病気で休職していた人がいるんです。復帰したいけど怖い。また前みたいにフルで働いて怒鳴られたりしないだろうかと人間不信になってしまったり……」 岳野さん自身、飲食の仕事が長く、ブラックな職場も経験してきたことから、ここではのびのびと楽しく働いてほしいという気持ちが強い。現在ショートケーキ・カンパニーには5人のパティシエがいるが、オープン当初から誰一人辞めることなく続いている。 後編ではスタッフの奮闘や、岳野さんがミシュラン二つ星にまで育て上げた割烹の女将を辞め、ホストクラブの広報を引き受けた経緯、そして、これからの展望をお聞きします。 岳野めぐみ(たけの・めぐみ) ショートケーキ・カンパニー オーナー。株式会社緑多代表取締役。上級SNSエキスパート(一般社団法人SNSエキスパート協会)。SNS運用とコンサルティング、企業研修のエキスパートとして自衛隊や高島屋で講師を務める傍ら、飲食店・パーソナルジム・芸能人など、SNSの運用代行と顧問アドバイザーを多数務める。「ミシュランガイド東京」銀座二つ星店の女将、歌舞伎町マーケティング広報を経て、SNSマーケティング起業。2021年8月に法人化。著書に『世界一やさしいTwitter集客・運用の教科書 1年生』 (ソーテック社) 取材・文:井出千昌
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