なぜポール・マッカートニーは「スーツケース」の一番上に大麻を入れていたのか 世界を震撼させた「成田で現行犯逮捕」裏話
第1回【“マトリ”の事務所を取り囲んだファンが「イエスタデイ」を大合唱 ポール・マッカートニー「成田で大麻逮捕」秘話】を読む 【レア写真】一見普通…ポールが大麻200グラムを入れていたスーツケース 今年83歳を迎えるポール・マッカートニーといえば、世界の誰もが認める大物ミュージシャン。2022年から2年間にわたる「GOT BACKツアー」ではビートルズやウイングス、ソロの曲を披露し、まだまだ現役であることを印象付けた。前回の来日が2018年だったことを考えると、また日本公演があるのでは……と期待しているファンも多いだろう。 そんなポールだが、75年には日本側にビザ発給を拒否され、80年には成田で現行犯逮捕された過去がある。どちらも薬物に絡んだ出来事で、特に逮捕は世界的なニュースになった。逮捕後は「起訴猶予、強制退去」となったが、実は表向きの発表だったと明かしていたのは当時の日本側弁護士である。当時の麻薬捜査官や関係者たちが明かした「ポール逮捕」の舞台裏とは。 (全2回の第2回:「週刊新潮」2005年1月27日号「大麻逮捕から25年『ポール・マッカートニー』来日秘話」をもとに再構成しました。文中の年齢、役職等は掲載当時のままです。敬称略) ***
「起訴猶予処分」に納得できず
松尾(当時の日本側弁護士だった松尾翼)も走り回った。 ポールを招聘したウドー音楽事務所の担当者が「大麻だけはダメだ」と事前にポールに警告を発していたと報じられたが、松尾の調べで、これは誤報だと分かった。松尾は月刊誌に発表した手記にこう書いている。 〈私は弁護活動の一環として、ウドー音楽事務所と接触したり、ポールや「ウイングス」やマネージャー達、これに関係した全員に直接面談して、その全員がウドー音楽事務所から事前にこの旨の連絡を受けていないことを確認し、英文のステートメントを作成した。そして関係者が各自署名して捜査当局に提出したのである〉 結局、10日間の勾留の後、東京地検はポールを起訴猶予処分にしたが、これはどう考えても甘すぎる処分であり、先の小林はいまも納得していない。 「ポールは英国の女王から勲章をもらった音楽家かもしれませんが、200グラム以上も持ち込もうとした。それで、なぜ起訴猶予処分なのか。大きい事件を挙げると事務所で打ち上げをするのですが、この事件は1人2000円ずつ出し合っての、ささやかな『残念会』になってしまった」