「神戸モダン建築祭」港湾都市の名建築を一斉に公開! 建築ライターが歩いて触れる街のアイデンティティ
高砂ビル1階ホール。1949年竣工の高い天井高をもった空間に、雑多に物が置かれさまざまなチラシやポスターが随所に貼り付けられている。日々新しい取り組みが行われているであろう活気が伝わってくる。
ヨーロッパの街角を思わせる美しい石張りの外観をまとったアール・デコの傑作、新港ビルヂングは1939年の竣工。保存状態の良さは、行き届いた管理はもちろんのこと、妥協なく選ばれた高品質な材料によるものでしょうか。 連続する街並みも近い意匠が意識されており、この建物の隣に下手な建築は建てられないぞという意気込みが伝わってきます。良い街並みというものは、往々にしてそのように形成されていくのかもしれません。
様式は違えど、左右の建物でデザインの統一性が感じられる。
これらの建築からは少し時代を下って1969年に建てられた神戸商工貿易センタービルは、霞が関ビルディングに次ぐ国内2番目の超高層ビルとして建てられたオフィスビルです。 外観からは四角形平面のごく一般的なオフィスビルに見えますが、中に入ると建物の中央を縦横に通路が交差する特徴的な空間が現れます。今回はかつて展望室だったという26階の会議室が公開され、これから見学する、あるいは見学してきた神戸の街を一望することができるスポットとなりました。
開放的なエントランスホールの中心に、エレベーターコアが位置する。45度で交わる通路が特徴的だ。
展望室からは、船の発着するポートアイランド、神戸空港へ至るモノレールも見え、陸海空の交通が交差する様子を一望できる。
神戸観光の目玉。異人館とショッピングエリア
神戸異人館街と呼ばれる、かつて貿易で財を成した外国人商人たちが居を構えた北野エリアでは、豪奢な邸宅の数々やいまや世界的建築家となった安藤忠雄氏が活動初期に手掛けた商業施設が公開されました。 ヨーロッパの本格的なデザインを輸入しながらも日本の風土に合わせて細かな工夫が凝らされた異人館は、近い時代のものであってもさまざまなバリエーションを楽しむことができます。またなかでも建築家、ハンセルの自邸として建てられたシュウエケ邸には、年代物のシャンデリアやフランス製の家具、明治時代の浮世絵のコレクションなどが展示され、往時の生活が再現されています。長らく非公開だったものが公開され、神戸の文化の源泉に触れる貴重な機会となりました。