丹波焼の未来探る 鎌倉―現代作品35点展示 陶芸美術館テーマ展/兵庫・丹波篠山市
兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭)でテーマ展「丹波焼の世界season8」(同館、丹波新聞社主催)が開かれている。丹波焼最古の窯の一つ、三本峠北窯跡から発見された鎌倉時代の陶片から始まり、1985年に丹窓窯の故・市野茂良さんが手がけた白釉スリップ文角皿まで、それぞれの時代のニーズをくみ取りながら作られてきた丹波焼35点を展示。「田中寛コレクション」を中心に、日本六古窯の一つとして日本遺産にも認定された丹波焼の名品や、現代に活躍した作家の作品を通して丹波焼の未来を探っている。12月8日まで。 丹波焼独自の穏やかな印象を与える形が確立した室町時代中期に制作された壺(高さ約46センチ、直径約40センチ。県指定重要有形文化財)や、17世紀前半に誕生し、近世丹波焼を象徴する塗土「赤土部」の徳利(高さ37センチ、直径約26センチ。県重文)などがずらりと並び、来場者の目を引いている。 同コレクションは、全但バスの社長だった田中寛氏(1904―81年)による、県内産をはじめとする古陶磁コレクション。その大部分は県に寄贈され、現在、同館のコレクションの中核をなしている。 丹波焼は、平安時代末期に常滑焼(愛知県)など東海地方の窯業技術を取り入れて誕生。中世は、壺や甕、すり鉢を中心に、灰白色の素地に鮮緑色の自然釉が美しい無釉陶器の生産に終始する。近世初頭に、山腹に溝を掘り、天井を付けた「穴窯」から、登窯へと転換。趣向を凝らした茶陶や、葉茶を入れる耳付きの壺、「朝倉山椒」の名を記した壺なども生産するようになる。また、器面に塗った土部が赤く発色した赤土部、灰釉や石黒釉などの釉薬を生み出し、器面装飾に多彩な展開をみせた。 近世後期には、しゃれた雰囲気の白丹波とともに、京焼系の意匠・技法を取り込み、時代の求めに応じて作風を変化させ、近年は、伝統を生かしつつ斬新で個性あふれる作品も制作されている。 月曜休館。開館は午前10時―午後5時。観覧料は一般1200円、高校生以下無料。11月24日まで開催している特別展「九谷赤絵の極致―宮本屋窯と飯田屋八郎右衛門の世界」の料金も含まれる。(特別展開催中はテーマ展のみを観覧することは不可)。