補助金でサウナ、フルーツサンド店が爆増…ダブついた「国の基金16兆円」の使われ方を知っていますか
ばらまくことが自分の仕事と思っている政治家
基金は成果目標や事業の終了期限が曖昧なものが少なくなく、これまで5年、10年といった長期間の予算を一気に積んで規模を膨らませるケースが目立っていた。 12月20日に開かれた「デジタル行財政改革会議」の中間報告によると、政府は一度に計上できる予算を3年分程度に見直す。基金ごとに数値目標の設定を義務づけ、予算を追加して事業を続ける必要があるか判断できるようにする。186ある現行の基金事業を新ルールに基づいて’23年度末までに点検し、必要性に乏しい基金の国庫返納も求める考えだという。 「3年に1度、本当に必要な基金か検証する。そういう見直し規定をきちんと新ルールに入れるべきではないかと、行政改革推進会議でも提言はしていました」 コロナ禍以降に政治主導の規模ありきで新設された基金には、想定通りに使われていないものが多いとの指摘がある。 「コロナ禍での基金の新設のほとんどは、政治家が推したものなんです。それも、文科省と経産省の基金が多い。特に経産省は所管している業務が広範で、コロナ後にいろいろリクエストの多い分野なので、メリットのある政治家も少なからずいるわけです」 国民の負担はどうなのか。 「’23年度補正予算の7割の財源は国債で賄われます。国債は国の借金です。借金で賄ったお金を基金で蓄えるという、まったくもってナンセンスな構図になっている。 その借金を返済する時には、国民が返済の税金を払うことになります。 基金に投じるお金があるなら、なぜ少子化対策に回さないのかという意見も、当然ありますよね。財政資金が有効に使われないと、それだけ国民の負担は増えます」 政府には、基金にあてる予算をコロナ前の水準に戻す考えはないのだろうか。 「財務省は一生懸命、永田町に訴えているんですが、これほど物価が上がってもなお、政府はデフレマインドが改まっていないというか、デフレ時代の財政出動に依然として郷愁を持っているというか。 とにかく、ばらまきたい。物価が上がっていても、ばらまきたい。ばらまくことが自分の仕事と思っている政治家が、いかに多いかということですね」 物価高騰を実感してない政治家が、それだけ多いということでもあるだろう。デフレマインドからの脱却が最も必要なのが政治家とは。 「良識が通用する予算編成にしてもらわないと国民が困ります」 派閥の「裏金問題」で崩壊寸前の今の政権に、期待できることはなさそうだが……。 「今回、問題になっている派閥のメンバーの中には、コロナ禍3年間の基金の乱立と無縁ではない議員もいます。基金の新設を推してきた議員が今回の人事刷新で政権や党の要職から外れたことで、ひょっとすると廃止される基金が出てくるかもしれない。’23年度末までに、既存の基金の点検と見直しが徹底して行われることを望みたいところです」 土居丈朗(どい・たけろう)慶応大学経済学部教授。1970年生、奈良県生まれ。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。’09年4月から現職。専門は財政学、公共経済学。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議委員、財政制度等審議会委員などを務める。主著に『平成の経済政策はどう決められたか』(中央公論新社)『入門財政学』(日本評論社)など。 取材・文:斉藤さゆり
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