『あの花』再放送も話題 『凪のあすから』『AIR』など“平成夏アニメ”の名作を振り返る
2010年代に大ブームを巻き起こしたTVアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の再放送が、フジテレビ(関東ローカル)にて8月26日より始まった。同作は、監督・長井龍雪、脚本・岡田麿里、キャラクターデザイン・田中将賀によるオリジナル作品で、少年少女たちによるひと夏の不思議な出来事を描いた物語だ。 【写真】『あの花』を手がけた長井龍雪×岡田麿里×田中将賀による最新作『ふれる。』 そこで今回は、同作と同じ平成の名作アニメから、ちょっと切ない“夏の物語”をいくつかピックアップして紹介していきたい。 ●『凪のあすから』 まず取り上げたいのは、2013年10月から2クールにかけて放送されたP.A.WORKSのオリジナルアニメ『凪のあすから』。『あの花』の岡田麿里がシリーズ構成に携わった作品でもある。 陸で暮らす人々のほかに、海で暮らす人々がいるというファンタジー的な設定なのだが、そこで映し出されるのは少年少女たちによるリアルで繊細な心情の変化。いくつもの恋心がすれ違う上、途中で時系列が5年後へとジャンプし、さらに複雑な人間模様へと発展していく。切ないラブストーリーを得意とする岡田の面目躍如だ。 美術監督・東地和生の力が発揮された背景の美しさも見どころで、三重県熊野市をモデルとした陸の世界と幻想的な海の世界には思わずうっとりしてしまう。 ●『涼宮ハルヒの憂鬱』 また、平成を代表する大ヒットアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』にも、“夏の思い出”と強く結びついたエピソードが存在した。2009年に放送されたTVアニメ第2期で、全8話にわたって展開された「エンドレスエイト」だ。 涼宮ハルヒ率いるSOS団の面々が、夏休みの2週間を気づかないうちにループするという設定で、視聴者はほとんど同じ内容の回を8週連続で観るという衝撃の体験を強いられた。 しかし筋書き自体はかなりエンタメ性が高く、ハルヒやキョンたちが市民プールで遊んだり、盆踊り会場で屋台を回ったり、河原で手持ち花火をしたりと、にぎやかな日々を過ごすところが描かれていく。そのオチも含めて秀逸な構成となっているので、一度視聴してみる価値はあるのではないだろうか。 ●『ペンギン・ハイウェイ』 続いて、2018年に公開された劇場アニメ『ペンギン・ハイウェイ』。原作は第31回日本SF大賞に輝いた森見登美彦の小説で、少し不思議な力をもつ“お姉さん”と背伸びしたところのある小学生男子・アオヤマ君によるひと夏の物語が描かれている。 物語はアオヤマ君の住む街に突如ペンギンが出没し、消えていくという事件が起きるところから動き出す。アオヤマ君はそのおかしな現象を研究することにするのだが、そこでお姉さんとペンギンに何らかの関係があることを知る……。 アオヤマ君とお姉さんの微笑ましい関係と、切ないストーリーの絶妙なバランスが観る者の心をかき乱す良作。夏にぴったりな作品であることは間違いないはずだ。