正倉院展が閉幕、優美な宝物を最後まで堪能「多くの方に心豊かになっていただけた」
奈良市の奈良国立博物館で11日閉幕した「第76回正倉院展」(主催・奈良国立博物館、特別協力・読売新聞社)。優美な装飾に彩られた宝物57件を堪能しようと、最終日も多くの来場者が訪れた。 黄金瑠璃鈿背十二稜鏡
東京都練馬区の来場者(62)は供物を盛る花形皿「漆彩絵花形皿(うるしさいえのはながたざら)」に注目し、「外側や裏側の部分にも文様が描かれ、丁寧に作られたことが分かる」と感動していた。
奈良市の飲食業を営む来場者は、花模様のフェルトの敷物「花氈(かせん)」に見入り、「花文様が細かくきれい。ここまで形を変えず残っているなんて」と称賛。同市の来場者(78)は「伎楽面(ぎがくめん) 酔胡従(すいこじゅう)」について「眉毛やひげが1本ずつ表され、頬骨の出っ張りや目の力強さといった表現も印象的」と感心していた。
井上洋一館長は、魚形の腰飾り「碧瑠璃魚形(へきるりのうおがた)」などのガラス製品を例に挙げ、「1300年前の輝きを現代にそのまま残す宝物を見て、多くの方に心豊かになっていただけたと思う」と話した。
七宝細工の魅力を知る、公開講座に180人
「第76回正倉院展」が開かれていた奈良市の奈良国立博物館で10日、七宝細工が施された「黄金瑠璃鈿背十二稜鏡(おうごんるりでんはいのじゅうにりょうきょう)」の魅力について、同博物館の吉澤悟学芸部長による公開講座が開かれ、約180人が聴き入った。
正倉院には56面の鏡が伝わるが、黄金瑠璃鈿背十二稜鏡は鏡の中で唯一、ガラス質の釉薬(ゆうやく)が焼き付けられた七宝が施されている。
吉澤部長は再現模造品の画像をスクリーンに映し、高度な技術で制作されていることなどを紹介。古代の鏡は青銅製や白銅製が多く、「黒ずみやすい銀が鏡として適しているかは疑問」としながらも「制作当初の色、つやをとどめている奇跡の鏡だ。精巧な設計や金工技術が感じとれる」と話した。