繁殖場のケージに10年以上 保護されたトイプーの瞳は怯えていた 保護10カ月で初めてヘソ天、心の扉が開き始めた
2023年夏、小型犬の繁殖を行っていた業者が数匹の元繁殖犬を手放すことにしました。「できるだけ多くの命を救いたい」と保護団体、アイドッグ・レスキュー隊が立ち上がり、複数のワンコを保護。そのうちの1匹・トイプードルのオスのトキくんは、保護当時、「僕はこの後どうなるの?」と不安げな表情をしていました。 【写真】トリミングを終えて笑顔に
10年前後ずっと「道具」として生き続けた
推定10歳ほど。10年前後、ずっと繁殖場のケージの中で、人間の愛情を受けることなく過ごしてきたことになります。 それを思えば、突然現れた団体メンバーに不安げな表情を浮かべるのも無理はありません。後にトキくんのお世話をすることになった団体提携の預かりボランティアさんは、努めて明るく接するようにしました。
褒められて自然と浮かんだ、くったくのない自然な「笑顔」
トキくんはシニアの域に達した月齢ながら、重篤な持病はなく明るく穏やかな性格です。ただし、当初はやはり遠慮気味。「本当に甘えても良いんでしょうか」と緊張気味に預かりボランティアさんを見上げていました。 体をなでてあげるとうっとりはしますが、その表情は固いまま。完全には心を許していないように映りました。 3カ月ほどが経過したある日、トリミングに連れて行き、キレイサッパリの体になったトキくんはそれまでにあまり見せなかった、屈託のない笑顔を浮かべてくれました。 みんなから「かわいいね」とほめられたことがうれしかったのかもしれません。この頃からトキくんが少しずつ「本当の自分」を見せてくれるようになりました。
初めて見せてくれた「ヘソ天」に涙があふれそうに…
保護から10カ月が経過したある日のこと。トキくんがそれまでに一度も見せたことがなかったポーズを見せてくれました。それはヘソ天です。 預かりボランティアさんは当初、「たまたまひっくり返っただけかな」と見ていましたが、トキは自分の意思でヘソ天を始めた様子。不馴れなヘソ天なので、一箇所に留まっていられず、ゴロゴロ転げ回っていましたが、しかし、これもまたトキが心を許してくれた証拠。ゴロゴロ転げ回るトキを前に、預かりボランティさんは熱いものがこみ上げました。
笑顔とヘソ天がさらに自然なものとなり、幸せを掴んでほしい
団体に保護されてから1年。団体は里親さんとのマッチングを待っています。 たっぷりの愛情を注ぎ続け、いつの日か完全に人間に心を開いてくれることを期待しお世話をし続けています。 トキくんの笑顔とヘソ天がさらに自然なものになり、どこかに繋がっているであろう「幸せの赤い糸」を手繰り寄せてくれる日が来ますように。 (まいどなニュース特約・松田 義人)
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