英に債券自警団の厳しい目、8兆円増税でも-トラス政権の悪夢を警戒
(ブルームバーグ): 英労働党政権のリーブス財務相が30日の英議会で重要な予算演説を終えた際、債券トレーダーらは歓迎ムードと思われた。
リーブス氏は予算計画で、財政をしっかり管理しつつ投資財源を確保する方針を示そうとしたが、議会での説明からわずか数分で、英国債指標銘柄の10年国債相場は上昇分を消し下落した。
2022年のトラス保守党政権では、大型減税案などが財政不安を引き起こし、英国債とポンド相場の急落を招いた。スターマー政権はその記憶を払拭(ふっしょく)し、債券投資家を引き続き味方に付けることを目指している。しかしこの日の相場急変は、綱渡りの財政運営を強いられる状況を浮き彫りにした。
労働党政権が約15年ぶりに公表した400億ポンド(約8兆円)増税を柱とする予算計画の内容は、事前に十分周知されサプライズはほとんどなかった。だが予想を上回る規模の国債入札予定に加え、イングランド銀行(英中央銀行)の追加利下げが少なくなる見通しが示され、英国債相場は下げに転じた。
RBCブルーベイ・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ニール・メータ氏は「留意すべき最大のポイントは膨大な借入額と、野心的な成長予測だ。全体として、リーブス財務相は非常にうまく自信を持って説明した。信頼性は高いが、成長率や借入額に関し、計算違いが許される余裕はあまりない。債券自警団を解き放つ恐れがあるだろうか。英国債利回りが高止まりし、成長が目標に届かず、増税や借り入れ拡大が必要になれば、答えはイエスだ」と指摘した。
英債務管理庁(DMO)は30日、2024-25年度の国債発行予定額が2970億ポンドになると発表した。ブルームバーグが調査した16債券ディーラーの予想では2930億ポンドと見込まれていた。
一方、予算責任局(OBR)は同時に公表した経済・財政見通しで、英中銀の主要政策金利と英国債利回りの予測を引き上げた。