【“札幌ススキノ首切断”裁判】田村瑠奈被告を核とする“閉じた家庭”で作られた《いびつな親子関係》精神科医の父親・修被告はなぜ娘の暴走を止められなかったのか
「程度の差はあれ、子どもが家庭の中で、支配者になることは構造として起きがち」ということです。 精神科医・香山リカさん 「一般論になるが少子化が進む中で、親は子供によかれ…と思って育てるわけだが、何か子供が要求をしたり、少し乱暴なことを言ったりしたときに、親はどうにかして機嫌よく勉強してもらったり、あるいは何か問題を抑えたいと思ったりした時に、子どもの要求に応える」 「そうした対応で問題が解決するんじゃないかと考えがちだが、一度そういう対応を取ってしまうと、子どもは悪意がなくても、要求がエスカレートしていくことがある」 「親は、こういう欲求を聞いてあげたら、今度こそ、子どもは気づいてくれるはずだ…、成長してくれるはずだ…と、どんどん悪循環に陥ってしまう…」 「その結果、子どもが要求したことに、親が何でも従う、子どもの顔色を伺いながら、親がビクビクしながら生活を送るようになってしまうケースは、どこの家庭でも程度の違いこそあっても、起こり得ること」 今回、弁護側の証人として出廷した父親の修被告は、事件以前の瑠奈被告の様子を語りました。 ◆【“自分はシンシア"~ジェフと結婚】 瑠奈被告の"妄想"について、質問された父親の修被告は、こんな証言をしています。 「10年ぐらい前から娘に対して、『瑠奈』と呼びかけると"ルナはもう死んで自分はシンシア"だと。"ジェフと結婚式を挙げる"と言い出し、こういう風にして…と相談され、お香をたいたり、われわれが音を鳴らしたりして列席した」 香山さん、こうした様子からどんなことが考えられますか? 精神科医・香山リカさん 「これは別人格が現れているということで、誰もが考えることとして、医学的には解離性同一性障害、いわゆる多重人格ということだが、一般論だが、何か大きなトラウマがあって起こることだと言われている。田村瑠奈被告が、そこまでトラウマがあったのかどうかが1つのポイントとなると思う」 「自分の中で空想の人格を作り上げて、まるで友だちであったり、自分のパートナーであるかのように接したりということは、特に多重人格でなくても起こることなので、田村瑠奈被告が“シンシア”や“ジェフ”という存在を作り出して、どうしてこだわっていたのか…今回の証言だけでは、病気と診断できることではない」 「一番の問題は“ジェフ”との結婚式を挙げるといって、瑠奈被告に完全に両親が巻き込まれている。家族が“一体化”していて、瑠奈被告に意見も言えずに、逆らえない状況が固定化してしまっていたことが、一番の問題だったのではないか…と考える」 修被告は、娘の田村瑠奈被告に、精神科の受診を勧めてことも、1日の公判では証言しています。どこかで歯止めをかけることはできなかったのでしょうか。 精神科医・香山リカさん 「家族3人だけの閉じた世界で、こうした状況が10年以上も続いて生きたわけで、何かそこで圧力を抜くような突破口がなかったのかと思う」 「そこで精神科の受診を瑠奈被告に、父親の修被告も勧めたのだと思うが、精神科医の立場から考えた時、無理に受診させることに躊躇いがあったのかもしれない」 「ただ精神科の受診だけでなく、かつてなら親族の誰かだったり、近所の人だったり、第三者がこうした“閉じた家庭”に入るチャンスもあったと思うが、現代社会ではそれも難しく、長年にわたって、親子三人で悲惨な家庭状況が続いてしまっていたのだと思う」 次回の公判は8月30日で、引き続き証人尋問が行われます。
北海道放送(株)
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