中央線8番ホームから当たり前のように見えていた中野サンプラザ
窓越しには中野駅が見下ろせた。一番手前の8番線には50年前と同じ東京行きの中央線快速電車がひっきりなしに出入りしていた。 解体と言えば東京都心部は再開発ラッシュで至るところで古い町が壊され、新しい建物ができていく。私の職場がある汐留周辺に目を転じても、旧築地市場の隅田川沿いにある桟橋は大がかりな工事の末、屋根が取り壊された。また、運河沿いのこじゃれたマンション群の先端にある晴海客船ターミナルは〝お役御免〟となり、これも解体作業真っ盛りだ。 いずれも東京を代表する歴史ある巨大建造物だった。東京の歴史は壊しては新しい建物を造る、その繰り返しで成り立ってきたと言われる。今はオフィスビルになったりタワーマンションになったりする。高さ自慢、広さ自慢、景観自慢―。都心の再開発ビルのうたい文句はいつもそれだ。特にタワマンに目立つ。 もちろん古ければ良いわけではない。老朽化や防災上から地域によっては再開発が必要だし、サンプラザだって閉館、解体は老朽化が原因だろう。それを惜しむ人も多いに違いない。
それでも再開発地区の無機質な白色フェンスにあるわざとらしい花の絵や子どもの絵画で囲われた町並みを歩くことに、嬉々とした気持ちにはなれない。築地だって晴海だって解体作業中の巨大クレーンを何度となく見ても東京の「明るい未来」につながるとは思えず、疲労感が増すばかりだ。 それでも少しも変わらない界隈はきっとあるはず。「古くて汚くたって見栄えが悪くたっていいじゃん」と思える町並みを探し回ってみよう。バイバイ、サンプラザ。 ☆共同通信・植村昌則 中央線は今、大がかりな変化の渦の中にある。2024年度にはグリーン車を2両増結して12両編成化が実現する予定だ。そのためのホーム延伸工事が佳境に入っている。都心から各地へ放射状に伸びる5方面の通勤電車で唯一グリーン車がなかった中央線だが、快適な通勤が期待できるのだろう。103系、201系、E233系と進化を遂げてきた中央線は山手線とともに通勤電車の雄と思ってきた。正面真ん中に巨大な「特別快速」のヘッドマークを掲げて走っていた103系が妙に格好良かった。