新エネルギー基本計画の原案が事実上あきらめた原発の新増設 土守豪
環境省と経済産業省は2024年12月24日、合同審議会を開き、「50年カーボンニュートラル(二酸化炭素〈CO2〉排出実質ゼロ)」に向けた、途中段階の新たな削減目標を決定した。35年度に温室効果ガス排出量を13年度比60%減、40年度に同73%減とする。12月17日に、経産省が新たなエネルギー基本計画の原案を提示したことで、同省と環境省は異例のスピードでCO2削減目標の検討を進めていた。国際会議の合意により、各国は25年2月までに、国連に国別の削減目標などを提出することになっているため、前述の数字などが提出される見込みだ。 エネルギー基本計画(エネ基)は、日本のエネルギーの長期的な方向性を示すもので、約3年に1度、改定される。経産省が24年12月17日に提示した原案は、「第7次」エネルギー基本計画となる。エネ基とCO2削減目標は整合性が取れている必要がある。日本政府は菅義偉首相時代の20年に、日本の削減目標として「50年までにカーボンニュートラル(CO2排出実質ゼロ)」を定めたが、例えば「エネ基のエネルギー予測で計算したら、CO2排出量が大きく増えて、カーボンニュートラルが実現できない」では困るからだ。 経産省が12月17日に明らかにした新たなエネ基の原案では、40年度の電源構成見通しとして、「再生可能エネルギー4~5割程度」「原子力2割程度」「低炭素火力3~4割程度」が提示された。うち再生可能エネルギーは「太陽光22~29%」「風力4~8%」「水力8~10%」「地熱1~2%」「バイオマス5~6%」という比率で、原子力の比率や再生可能エネルギーの拡大を太陽光に依存する構造は、従来のエネ基からほぼ一貫して変わっていない。 ◇再稼働と建て替え前提 原発は2割程度とされたが、23年度の原発比率の速報値が8.5%なので、40年度2割のためには、既存原発の再稼働と廃炉原発の建て替えが前提となる。原案では、建て替えを同じ電力会社であれば他の敷地でも認めると条件を緩和したが、新増設に関しては盛り込まず、あくまで40年度で2割になる原子炉基数を維持する方針を示した。今回のエネ基はメディアなどでは「原発回帰」と報じられているが、経産省・電力業界をもってしても、コストが急増する原発の新増設は事実上困難と見ているとも受け取れる。
一方、CO2削減目標は環境省の役割が大きい。同省と経産省はすでに、前述の35年度に温室効果ガス排出量13年度比60%減、40年度同73%減の案を審議会に提示していた。ある審議会委員からは「もっと野心的な目標にすべきと意見書を提出しようとしたが、省庁事務方から止められた。この進め方で正しい方向性の政策が作れるのか」との声もあったが、最後は省庁がこれを押し切った形になった。 (土守豪・エネルギージャーナリスト)