豊富な「野菜・魚」生産県なのに…全国下回る摂取量の静岡県 官民連携で消費拡大へ、食べ方提案
豊富な農産物や海産物に恵まれた静岡県。だが意外にも、静岡県民は野菜も魚もたくさんは食べていない-。そんな実情が明らかになり、官民で野菜と魚の消費拡大を目指す「やさかなプロジェクト」が進行中だ。静岡県と静岡県漁業協同組合連合会、キユーピーが連携し、野菜と魚を同時に味わえるメニュー開発や販売会を通じて、新たな食べ方を提案している。 11月3~7日の「いいさかなの日」に合わせ、沼津市のマックスバリュ沼津南店で3日に開かれた店頭イベント。プロジェクト関係者が、買い物客に野菜と魚を使った試食メニューを配ってPRした。 家庭で手軽に実践できるよう、カット野菜にマグロの切り落としをのせ、味付けは和風のタマネギドレッシングのみ。キユーピー静岡営業所の広尾禎久所長(53)は「生魚はしょうゆなど調味料と一緒に食べる印象が強いが、塩分が気になる人もいるのでは。ドレッシングなら油も入っているため塩分を抑えられる」と薦める。 静岡県漁連指導部漁業振興課の小林智憲さん(27)は「こんなに簡単においしくできるのかと驚き。日々の食事の選択肢になりそう」と語る。小林さんによると、これからの季節はサクラエビ、カキ、サワラがおいしいという。「共働き世帯が増え、時間がかかりそうな魚の調理は敬遠されるかもしれないが、肉だけでなく魚も食べてほしい」と呼びかける。 健康の面からも日常的に食べることが望ましいとされる魚と野菜。だが、総務省家計調査によると、静岡市と浜松市の魚の年間購入量(2021~23年の平均)は、2人以上の世帯で全国平均の約2万グラムより約2千グラム少ない。野菜は22年の県民健康基礎調査によると、県民の1日当たりの摂取量が、男性は288・0グラム、女性が282・6グラムで、厚生労働省が掲げる目標の350グラムに届いていない。 「生産県」なのに、なぜ消費が少ないのか。静岡県は、野菜と魚はどちらも調理が面倒▽量をたくさん食べられない▽子どもが苦手-といった理由で、家庭での調理機会が減っているのではないかと推測する。店頭では「野菜も魚も高くなっているから」と物価高騰を理由に挙げる買い物客もいた。県水産振興課の小塩理緒菜さん(23)は「冷凍技術が発達しているカツオやマグロは価格が安定し、調理もしやすい。手軽に食事に取り入れる習慣を付けてもらえたら」と話す。 プロジェクトは8月に「やさかなメニュー」の選定会を開き、店頭で紹介したメニュー以外に冬4種類、春4種類を決めた。例えば、冬の定番のぶり大根。材料はブリ、大根、塩、水、黒酢のタマネギドレッシング。煮込み時間を短縮するため、電子レンジを活用するなど、忙しい人にも優しい調理工程になっている。県はホームページでやさかなメニューを紹介し、県内産野菜と魚の魅力を伝えていく。 各地でメニューPR やさかなメニューは8日と11~15日に県庁東館食堂で提供する。このほか、16日にはエブリィビッグデーの笠井街道店、浜北店、駿河店、清水町店で試食販売を実施。23、24日には静岡市駿河区のツインメッセ静岡で開かれる「産業フェアしずおか2024」にブースを出展し、来場者に試食してもらう。
静岡新聞社