ICT建機、復旧に威力 コマツ、豪雨被災者に貸与 珠洲・土砂崩れの牧場整地
●農業、畜産の再建後押し コマツのICT(情報通信技術)建機が奥能登豪雨の被災地で威力を発揮している。石川県を通じて被災者に貸し出しており、珠洲市内の牧場では、自動制御で整地できるICTブルドーザーが土砂崩れに見舞われた牧草地の復旧作業で活用された。奥能登では畜産業に加え、基幹産業の農業も地震と豪雨の「二重被災」で農地や水路に被害が出ており、今後被災者のなりわい再建を後押しする。 ICTブルドーザーは衛星利用測位システム(GPS)を使って自車の位置を把握し、車体前方のブレードを自動制御で上げ下げして地面の凹凸をならす。必要な操作は移動や旋回のみで済むことから、熟練のオペレーターでなくても整地できる。 珠洲市唐笠町の松田牧場は、県を通じて10月にICTブルドーザーと油圧ショベルの貸与を受け、復旧が進んだ。牧場では元日の地震による地割れに加え、9月の豪雨で周辺の山が崩れて土砂が牧草地に流入した。代表の松田徹郎さん(35)によると、草地24ヘクタールのうち、4分の3に被害が出たという。 ICTブルドーザーは斜面に広がる草地も傾斜に沿って整地することが可能だ。松田さんはブルドーザーの運転経験はなかったが、「操作が容易で助かっている。雪が降るまでにできるだけ修復を進めたい」と手応えを語った。 ●水田修復で実証実験 コマツと県は2013年に農業に関する包括連携協定を結び、いしかわ農業総合支援機構(INATO)などとICT建機を活用した生産性向上に取り組んできた。 地震を受けて1月下旬からは志賀町の農業法人「ゆめうらら」で水田の亀裂を修復する実証実験を実施。深さ1メートル以上の地割れも問題なく埋めることができたことから利用を広げ、これまで水田7カ所、牧場2カ所で活用されてきた。 石川県によると、豪雨による農業関連の被害は、農地や水路、農道などを合わせ、2200カ所以上に上る。INATOの担当者は来年は営農を再開したり、冬季に本格的な復旧を進めたりする農家もあるとし「ICT建機を活用し、ニーズに合わせた支援をしていく」と話した。