ポルシェ911 詳細データテスト 良好な乗り心地 使い切れる適度なパフォーマンス 絶望的な遮音性
快適性/静粛性 ★★★★★★★★☆☆
エルゴノミクスと視認性に関しては、ダカールに客観的な欠点を見いだせない。全体的に魅力的なマシンだ。なのだが、これほどすっと乗り込んで楽に走り出せるクルマはそうそう作れないだろう。さらにボーナス的な要素として、ホイールのガリ傷の心配が少ないことが挙げられる。比較的、タイヤによる保護が効いているからだ。 走らせると、スプリングの低くなったレートと増えたトラベルが、すぐさま明らかに感じ取れる。ダンピングの動きの上質感や、もっとぶっちゃけ言えば高価そうな感じは期待するほどではないかもしれない。いっぽうで、なめらかに流れるような走りは、ほかの911では味わえないものだ。 路面のポットホールや大きな隆起も意に介さずプログレッシブに吸収するさまは、カイエンやマカンに近いものがある。いや、むしろこっちのほうが上かもしれない。 ミドシップのウラカン・ステラートが見せる、デリカシーや軽さを感じさせるタッチはない。しかし、23万2000ポンド(約4315万円)のライバルに大きく引き離されているというほどではない。 ただし、車内はうるさい。もしくは、ひどくうるさい。オールテレインタイヤと。リアシートがあれば見込める遮音性が欠けていることで、113km/hでの室内騒音値は73dBAに達する。これはもう、スーパーカーのテリトリーに、片足どころか首までズッポリとハマっているレベルだ。 コンペティションカーに思いを馳せたことを感じさせる劇的演出だと思えないこともない。油圧サスペンションリフトシステムの独特な唸りはまた、耳を楽しませてくれなくもない。それでも購入者の多くは、非常にいい乗り心地と、これほどひどい遮音性が共存するとは想像しないままにこのクルマを手に入れるに違いない。
購入と維持 ★★★★★★★★☆☆
車両価格を見る限り、競合車よりコスパがよく思えるのはポルシェの常だ。17万3000ポンド(約3218万円)という本体価格は、唯一の直接的なライバルと言えるウラカン・ステラートよりだいぶ安い。日常遣いのしやすさも、ポルシェのほうが上だ。ただし、どちらの変わり種も乗り心地はすばらしく、残価率も驚くほど高いと予想される。 もしも中古車を探すなら、少なくとも短期的には新車価格を上回る値付けとなるだろう。最近のポルシェへの需要と、限定的な供給により、一部のスペシャルモデルには法外なプレミアムがついている。ダカールもそうなるだろう。 しかし、買い損ねてもこう考えてはどうだろう。ダカールの本体価格で、新車のカレラGTSと、走行少なめのアリエル・ノマドを買ってもお釣りが来るのだと。 ダカールの点検インターバルは3.2万kmで、12.7km/Lというクルージング燃費は911ターボと同程度。注意深く走っても、オフロードではマッドフラップやクラッディングにダメージを負うだろう。そういう点を除けば、これはしょせんただのポルシェ911なのだが。