ポルシェ911 詳細データテスト 良好な乗り心地 使い切れる適度なパフォーマンス 絶望的な遮音性
はじめに
ポルシェ911ダカールに、多くの説明はいらない。ヴァイザッハのエンジニアが、996世代のスーパーカップ・レースカーをロードゴーイングカーに仕立て直したGT3以来、もっとも意義深い市販911のルールブックの再解釈だ。25年近く前に登場したGT3は、結果として911のモータースポーツ由来のDNAを象徴するモデルとなった。 【写真】写真で見るポルシェ911とライバル (16枚) では、今回のテスト車はと言うと、それ以上に着想の源が明らかだ。1984年、1万2000kmの悪路を走破し、ポルシェにパリ-ダカールの勝利をもたらした、大幅な改造を受けたGシリーズの911である。燃料タンク容量は270L、マニュアル操作のロッキングセンターデフを備え、ホイールのトラベルは300mm近い。ただし、エンジンはロードカーとたいして変わらない3.2Lフラット6。953として知られるモデルである。 その後、これにつづいたのが959パリ-ダカール。見るものすべてにサプライズを与えた、もっとも困難な悪路レースを勝ち抜き、953以上に有名なモデルとなったクルマだ。これらへのオマージュである911ダカールは、2500台の限定生産となる予定だ。 少なくとも911というクルマの性格を考えれば、このオフローダー仕立てはきわめて特殊だとも、これまでにないほど自由な発想の特別仕様車だとも言える。最新のGT3RSは、サーキット向け市販911の能力がどこまで行けるのかを再定義し、S/TはRSの厳密さを緩めて公道向けに仕立てたモデル。スポーツクラシックは、MTで後輪を駆動するターボにすぎない。 その点、ダカールは、パッと見でも下回りの保護パーツやカイエンのような地上高、オールテレインタイヤなど、911らしからぬ装備で悪路走破性を高めている。かつてパリダカに挑んだ、特別生産の911たちのように。 では、現代のライバルと比べた場合にはどうか。ロードカーとして、このクラスの上位に食い込む、あるいはトップを脅かすことができるのだろうか。