金正恩主導の北朝鮮特殊部隊「暴風軍団」含む1万2000人がウクライナ軍と激突へ! しかし、ロシア軍との連携は? 捕虜になったら?
北朝鮮にとって史上初の1万人以上の海外派兵となる、ロシア・ウクライナ戦争への電撃参戦。金正恩総書記が自ら主導して「押し込んだ」とみられる1万2000人(10月末時点)の実力は? そして、この派兵は金王朝の未来にどんな影響を及ぼすのか? 【写真】上半身裸になって戦闘訓練をする北朝鮮軍特殊部隊のパフォーマンス * * * ■本格的な参戦は準備を終えた12月? 北朝鮮軍(以下、北軍)がロシア・ウクライナ戦争に参戦する――。10月上旬にウクライナや韓国の政府周辺からそんな情報が流れ始めた当初は、まだその真偽について懐疑的な見方が多かった。しかしその後、北朝鮮兵の映像、あるいは人数や部隊編成などの具体的な情報が出回り、もはや参戦の事実を疑う声はなくなった。 先遣隊としてロシア入りしていた3000人は、朝鮮半島有事の際には韓国に浸透して工作・破壊活動を担う、第11軍団の精鋭特殊部隊「暴風軍団」とされる。 北軍特殊部隊の能力は謎に包まれているが、1968年1月に北軍特殊部隊が韓国大統領の暗殺を狙った「青瓦台襲撃未遂事件」の際、南北国境線(38度線)付近に展開した米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」に所属していた三島瑞穂軍曹(故人)は、「北軍特殊部隊の兵士は、38度線付近の地雷原を障害走のように跳び越え、全力走で突破してくる」とブリーフィングを受けたという。 元陸上自衛隊中央即応集団司令部幕僚長の二見 龍氏(元陸将補)はこう分析する。 「特殊部隊が先にロシア入りした理由は、ウクライナ軍(以下、ウ軍)の特性に合わせた戦い方を学ぶためでしょう。特に、ウ軍の戦法―部隊の移動、補給、砲兵運用、機甲戦力による突進、塹壕戦、偵察・攻撃ドローンの種類や運用方法といった内容を研究するためであると思われます。 この先遣隊は幹部が主体とされ、作戦のシミュレーション教育、現地司令部での研修の体制をすでに確立している可能性があります」 そして10月28日、NATO(北大西洋条約機構)のルッテ事務総長は、この特殊部隊員3000人を含めた北軍派兵部隊1万2000人(そのうち将官3人、将校500人)が、ウクライナが〝逆侵攻〟しているロシア西部のクルスク州に、すでに配置されたことを確認したと発表した。 兵士たちはまず北朝鮮からロシア軍(以下、露軍)の輸送艦などでロシア極東部ウラジオストクの訓練センターに入り、そこで兵科を振り分けられ、露空軍の輸送機でクルスク入りしたようだ。 「とはいえ、すぐに戦闘開始というわけにはいきません。戦闘準備に約1ヵ月を要するとみられるので、12月に本格参戦となるでしょう」(二見氏) ロシア語、ウクライナ語を話せない北軍部隊と、露軍の連携を疑問視する声もあるが、二見氏はこう指摘する。 「クルスクでは現在、露軍がウ軍部隊を三方から包囲しています。そのどこかに境界線を引いて、露軍がいない北軍だけの区画を作り、自由に戦わせればいいのです。 もちろん、北軍が戦場として長年想定してきた朝鮮半島の38度線付近とは地形がまったく違うので、最初は苦戦するでしょう。ウ軍がドローンで北軍部隊の進撃を止め、ハイマースでクラスター弾を撃ち込めば、相当な損耗が出ると思われます。 しかし、両軍が入り乱れた近接戦闘の塹壕争奪戦となれば、命を捨てることもいとわず次々と攻め込んでくる北軍はウ軍にとって恐怖でしょう。 いずれにしても旅団クラスでの参戦ですから、投入地域の戦況に一定の影響を与えることは間違いありません。現地での戦闘に慣れてくる来年春頃には、手ごわい部隊に成長していると考えられます」