高齢者の働く意欲を削ぐ在職老齢年金の見直し検討:自民党総裁選でも社会保障制度改革の議論を深めよ
自民党総裁選挙でも議論を深めよ
また、「高齢社会対策大綱」では、公的医療保険でも、75歳以上の後期高齢者のうち、医療費を現役同様に3割自己負担する対象の拡大に向けて「検討を進める」と明記された。持続的で安心な社会保障制度を確立するには、給付と負担のバランスを社会の変化に応じて常に見直していくことが必要になる。それには国民に追加の負担を求める「痛み」も避けられない。また、そうした見直しを、高齢者の労働供給の促進といった要素も考慮しながら進めなければならないという非常に複雑な状況に日本は置かれている。 給付と負担が年齢と所得に基づく現在の社会保障制度は、従来議論されているように、資産額を含めた支払い能力に応じて負担増を求める「応能原則」の適用を進めていく方向に見直す必要がある。 現在進められている自民党総裁選挙では、高市氏が高齢者の労働意欲を削いでいるという観点から、在職老齢年金の廃止を打ち出している。廃止に伴う将来的な年金給付額の削減や負担増加の具体策も提示しつつ、痛みを伴う改革を国民に理解してもらう議論を、各候補は総裁選の中でしっかりと深めていって欲しい。 (参考資料) 「働くシニア、年金減額も 65歳から介護保険料増加」、2024年9月14日、日本経済新聞電子版 「在職老齢年金、縮小を提起 高齢社会大綱 「働き損」防ぐ 「医療費3割」拡大へ議論」、2024年9月14日、日本経済新聞 「医療費3割負担 拡大検討 高齢社会大綱明記 6年ぶり改定」、2024年9月14日、東京読売新聞 「高齢社会大綱、在職老齢年金の縮小提起 「働き損」防ぐ」、2024年9月13日、日本経済新聞電子版 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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