日銀会合とFOMC後の会見でわかる「社会の違い」――なぜ日本はアメリカとこんなにも違うのだろうか
さらに気になるのは、質問した記者の中で、彼だけが、カメラで写されず、字幕でも名前さえ示されず、映像がまったく存在しなかったことだ。いわゆるネイティブでもない彼の質問の勇気に大絶賛を送りたいが、パウエル議長の対応には大失望だった。 ■「庶民の感覚を感じ取る力がない」パウエル議長 しかし、今回よそ者扱いされたのは、実は彼だけではない。CBS Newsのジョー・リング・ケント記者も質問したが、これに対してもパウエル議長は「はあ?」という感じの反応だったのだ。これが3つ目の驚きだ。
彼女も多分、このFOMC後の会見で質問をしたのは初めてだし、確かにCBS Newsという経済系ではない一般メディアの質問は珍しい。ただし、彼女は名門London School of Economicsと北京大学で、国際関係の修士課程を修了している。したがって、というか、その背景に沿ったような、非常に率直で、素朴な庶民の悲鳴のような、以下の質問をした。 「今の経済を心地よく思っていない人々がいることをどう思うか?」
これに対し、なんとパウエル議長は、「人々がどう感じるかを考えることはわれわれの仕事ではない。私が言いたいのは、データがなんと言っているかだ。そして、結局インフレはみんな困るだろう。だからとにかくインフレを制御することが大事なんだ」と言い放ったのだ。 そして、彼女の更問「あなたはもうすぐ利下げをする、する、と何度も言っているが、実際、いつするのか? みんな高い金利で苦しんでいるから、いつ金利が下がるのか、それを本当に知りたがっている。知って安心したいんです。お願いします」という趣旨の質問をした。
それに対して、パウエル議長は冷たく淡々と、専門家に答えるように「インフレが収まると自信を持てたときだ」と回答した。確かにそれはそうなのだが、庶民の心の代弁者の質問に心では答えていない。気持ちがわかっていて、答えないのなら鬼だが、単に、まったく庶民の感覚を感じ取る力がないという解釈が今回は当てはまるだろう。彼女の質問はまるでなかったかのような空気で、次の質問に移っていった。 しかし、これが日本だったらどうであろうか?