《酒税改正でビール商戦への影響は?》サントリーが新商品「サン生」猛プッシュ 全社メール、若手従業員へのバラマキなどで社員を鼓舞する“総力戦”へ
新しい「宣伝活動」のかたち
冒頭のサントリー「サン生」は新たな定番となることを狙って、昨年4月に大々的に発売された。 3兆円近いグループ売上高を誇るサントリーだが、ビール類では3番手に甘んじ、特に210円前後の価格帯(350ml缶)で他社の後塵を拝してきた経緯がある。 「2003年発売のザ・プレミアム・モルツは高価格帯でヒットしたが、スーパードライや一番搾りなど、他社の主力が集まる『中価格帯(スタンダードビール)』での成功はサントリーの悲願でもある。 2015年にリニューアルしたザ・モルツを昨年3月に製造中止とする決断を下し、サン生に懸けています。『金麦』など第3のビールが強いサントリーは正念場。特定のビールが定着していない若年層に受け入れてもらうことを最優先にして、すっきり系のサン生が誕生したとされます」(河野氏) 20~40代の若者に照準を絞り、苦味を抑えたライトな飲み口を意識して開発されたサン生。加えて、店頭想定価格を他社の同ジャンル品より約10円安く設定したことも、物価高のなか好意的に受け入れられたようだ。 サントリーは社運を懸けたビールを定着させるべく、様々な取り組みを進めている。 「20~35歳の従業員を対象に、サン生を『10本贈ろう』という社内キャンペーンを実施しています。応募した社員は、会社側の費用で友人や知人にギフトとしてサン生を贈れる。若い世代にサン生のファンをどんどん増やそうという取り組みです」(前出・サントリー社員) 全社的な取り組みの甲斐もあって、発売初年に目標の1.3倍となる399万ケースを売り上げ、2024年は600万ケースを目指す。発売から1年半が経つが、冒頭で紹介したように市場での存在感をじわじわ高めている。 ※週刊ポスト2024年11月22日号