22歳ココイチFC社長「意欲と学ぶ姿勢」育んだ背景 「自分を見つけるため遠回りしても遅くはない」
高校生で店長業務や教育係を担って学んだこと
「カレーハウスCoCo壱番屋」(以下、ココイチ)などのフランチャイズ運営を行うスカイスクレイパー。今年5月、新たに22歳の社長が就任した。抜擢されたのは、高校1年生からココイチでアルバイトとして働いていた、諸沢莉乃さんだ。いかにしてアルバイトから社長へとスピード昇進したのか。インタビューが進む中、諸沢さんの突出した意欲や学び続ける真摯な姿勢を育んだ背景が見えてきた。 【写真】高校時代の諸沢さん 諸沢莉乃さんは、秋田県生まれの横浜市育ち。15歳だった高校1年生のときに自宅のポストに入っていた求人チラシを見て、スカイスクレイパーが運営する横浜市のCoCo壱番屋緑区中山店でアルバイトを始めた。 「身近な友人がアルバイトを始めた時期で、自分もやってみたいと思っていた頃でした。高校生にとって働きやすい条件も魅力でした」と、諸沢さんは話す。 周囲の人たちは優しく、店にはすぐに馴染んだ。そこから仕事に情熱を注ぐようになっていった諸沢さんだが、そのきっかけは先輩だったという。 「初めて憧れの先輩ができたことが大きかったですね。その方は女子大生で、お仕事もバリバリできて格好よかったですし、いつもおきれいで、プライベートの相談にも乗ってくれました。どんなときも明るく、人の悪口やマイナスなことも絶対に言わない。『疲れた』という一言も聞いたことがありません。当たり前のことのようですが、難しいことですよね。お仕事だけでなく、人として素敵だな、こんな人になりたいなと思いました」 当初、週2~3回の勤務だったが、仕事がどんどん楽しくなってしまい、毎日のように働くようになったという。平日は下校後の18時~21時まで、土日はもっと長く働いた。アルバイトを始めた翌年には、ココイチの「全国接客コンテスト」で決勝進出を果たす。 そして諸沢さんは、高校生にして店長を務めるようになった。同社には、「意志ある者にはチャンスを」ということで、高校生アルバイトでも店長業務を経験できる仕組みがある。それを利用し、マネジメント業務を担うようになったのだ。意欲のある人間が力を発揮できる体制があったとはいえ、諸沢さんはどのような努力を重ねたのだろうか。 「最初に教えていただいたココイチのモットー“ニコ・キビ・ハキ”、つまり、ニコニコ、キビキビ、ハキハキをまずは何よりも心掛けるようにしました。また、お客様だけでなく、一緒に働く仲間もよく観察するように。仲間同士でぎくしゃくしているとどうしても雰囲気に出てしまいますから、例えば、顔色が悪い仲間がいれば、『何かあった?』と必ず声をかけるようにしていましたね」 そうしたことの多くは憧れの先輩から教わったというが、実践し、頑張れば頑張るほど周囲に認めてもらえることがさらなる意欲につながっていったという。 「会社のトップ(西牧大輔現会長)も誰より腰が低くて挨拶が美しく、格好いいと思いました。私の名前も覚えてくださり、何かと従業員のことを見てくれていた。そんなふうに憧れの人や寄り添ってくれる人がたくさんできて、自分はここで必要とされていると感じられたことが大きなモチベーションになっていきました」 もちろん、最初からすべてうまくこなせていたわけではなく、たくさんの失敗もした。しかし、失敗から学んだことは多いと諸沢さんは語る。 「失敗しても、次に同じ状況になったときに行動を変えてみれば、うまくいくし、失敗ではなくなる。それは仕事だけでなく人生も同じだと学びましたね。教える側になると、より失敗の大切さに気づきます。失敗して落ち込んでいるスタッフがいたら、どうすれば元気になってもらえるかを考えますが、そんなときはかつて自分がかけてもらった言葉や、立ち直ったきっかけが生きてきます。例えば、『私も同じミスをしたことがあるよ、私はそのときこういうふうにしたよ』『私の昔のミスは今こうして伝えることができているように、あなたの経験もいつか生きてくるよ』と声をかけます」 高校時代の諸沢さんについて、広報室長兼執行役員の今村弥生さんは、「当時から評価も本人のモチベーションも高かった。非常に珍しいケースですが、高校生のときから県外も含む他店に出張し、高校生や大学生を教える仕事も任されていました。当社の全員が知っているような高校生でしたね」と話す。 教育係を担う中で、人材を育成する力も磨かれていったようだ。後輩を指導する際に意識していることについて、諸沢さんは次のように語る。 「ポットの向きが間違っていた場合、『何かおかしいところがあります。どーこだ?』と、まず自分で気づいてもらうようにしてからその人の意図を聞くようにしています。その人にも何か意図があってやったことかもしれないので、まずは全否定しないで話を聞くことが大切だと思っています。また、指導に当たっては、一方的に粗探しをするのではなく、私も何か学ぼう、何かを持って帰ろうという点を意識してきました。当時からよい取り組みがあれば他店の学生にシェアしたり、交流の機会をつくってきたりしましたが、今後はもっと店舗を越えた形でそうした仕組みをつくれないかと考えているところです」