腕がほとんどない新種の肉食恐竜が見つかる、約7000万年前、南米パタゴニア
共通祖先から分かれ、対照的な2つの恐竜
さらに奇妙なことに、アベリサウルス類は南半球に暮らすノアサウルス類と近縁だった。アベリサウルス類は筋肉質の待ち伏せ型捕食者だったのに対し、ノアサウルス類はしばしば小さくひょろっとした体をしていて、小さな獲物、さらには植物を好んでいた。 「彼らはあまりにも違うので、近縁であることがおかしいほどです」とポル氏は話す。 コレケンの発見はポル氏らに、ジュラ紀に共通祖先から分かれた2つの系統がどのように進化して、これほど対照的になったかを調べるきっかけを与えてくれた。 ポル氏らは、ジュラ紀後期から白亜紀前期にかけて、コレケンのようなアベリサウルス類とノアサウルス類が、体の基本的な構造を急速に異なる方向へ進化させたことを発見した。セローニ氏によると、今回の研究の重要性は、非常に近縁であるアベリサウルス類とノアサウルス類がいつ分岐し始めたかを理解できることにある。 ノアサウルス類は後肢と胴体が変化し、アベリサウルス類の頭骨はカルノタウルスやコレケンのように、短くて装飾が施された肉食恐竜らしい形へと急速に進化していった。また、アベリサウルス類は頭骨の形こそ多様化したものの、体のほかの部分はどの種も比較的似通っていたとアニョリン氏は指摘する。 6600万年前に起きた大量絶滅前の、恐竜の最後の時期の化石はまだ珍しい。しかし、コレケンの発見によって、この重要な過渡期の化石をどこで探せばいいのかについて、専門家たちはアイデアを練り直せた。 「この重要な時期についてもっと知るため、私たちはこの時期の獣脚類の化石を探し続けなければなりません」と、ポル氏は述べている。
文=Riley Black/訳=米井香織