腕がほとんどない新種の肉食恐竜が見つかる、約7000万年前、南米パタゴニア
短い腕の理由は謎
「論文の主張はとても説得力があると思います」とアルゼンチン、ベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館の古生物学者マウリシオ・セローニ氏は第三者の立場で評価する。 なぜなら、2つの種の違いは明確だからだ。例えば、コレケンとカルノタウルスの鼻骨は簡単に見分けがつくし、コレケンに眉のような骨がないことも両者を区別するポイントだ。 コレケンとカルノタウルスが共存していたかどうかはわからない。ラ・コロニア累層は約500万年かけて形成されたため、2種の肉食恐竜が同じ時代を生きた可能性もあるし、時代が数百万年違った可能性もある。いずれにせよ、ポル氏らはコレケンの発見によって、鼻の低いアベリサウルス類が白亜紀後期にどう生きていたかについて、より多くの情報を得ることができた。 アルゼンチンのカルノタウルス、ニジェールのルゴプス、マダガスカルのマジュンガサウルスなど、アベリサウルス類は南半球の多くの地域で繁栄していた。ティラノサウルスが北米やユーラシアに広く生息していたのに対し、アベリサウルス類は南半球で最も広く分布し、最も多様な肉食恐竜の一つだった。 アベリサウルス類は大型の草食恐竜である竜脚類と共存していた。ポル氏らは2024年、やはりラ・コロニア累層で発見した首の長い草食恐竜をティタノマキアと命名したが、これはコレケンの獲物だった可能性もある。 「アベリサウルス類は白亜紀で最も注目に値し、最も魅力的な肉食恐竜の一つです。とさか、ドーム状の骨、角など、頭骨の装飾に独特のバリエーションがあります」とポル氏は話す。 ティラノサウルスに比べると、アベリサウルス類はいくらかずんぐりしていた。アベリサウルス類の腕(前肢)は胴体からほとんど出ていなかったと、ベルナルディーノ・リバダビア自然科学博物館の古生物学者フェデリコ・アニョリン氏は説明する。アニョリン氏も今回の研究には参加していない。 アベリサウルスは低い鼻に高い頭骨、太い首、太くて短い腕などの特徴が組み合わさっているので、すぐに見分けがつく。 「アベリサウルス類の腕は、ティラノサウルスよりさらに奇妙でした。肩の骨は巨大でしたが、腕は極端に短く、短い指が何本かありました。獲物の捕獲には全く役立ちませんが、なぜかかなり柔軟でした。この前肢を何に使っていたのかはまだわかっていません」とポル氏は話す。