グランドマザー彰子さま、出産後は… 一条天皇との関係は? 天皇の後継めぐり道長とバトルも
紫式部が主人公の大河ドラマ「光る君へ」。彰子さまに皇子が生まれ、『紫式部日記』がつづられました。実際の彰子さまと一条天皇の関係はどうだったのでしょうか。平安文学を愛する編集者・たらればさんと語り合いました。(withnews編集部・水野梓) 【画像】「光る君へ」たらればさんの長文ポスト 放送の1年「情緒がもつのか…」
皇子が生まれるものの、一条天皇は…
withnews編集長・水野梓:今回、第36回の「待ち望まれた日」で、ついに彰子さまが出産しました。 たらればさん:道長が待ち望んだ男皇子で、のちに後一条天皇となる敦成(あつひら)親王ですね。 水野:紫式部は、道長に頼まれて出産のようすを『紫式部日記』に書きとめていくんですよね。彰子さまと一条天皇の関係はどうなっていくんですか? たらればさん:これネタバレ大丈夫なんですか?(笑) まぁ千年前の史実にネタバレも何もないか……。 実は、一条天皇はそれほど長く存命ではないんですよ…。そうなると当然皇位継承があるわけで、冷泉天皇の第2皇子・居貞親王(のちの三条天皇)が控えています。 水野:紫式部日記が書き始められたのが西暦1008年で、一条天皇が亡くなるのは1011年なんですね……。 たらればさん:とはいえ、今後数年間、彰子さまと一条天皇は仲むつまじく過ごし、彰子さまは翌年にのちの後朱雀天皇となる敦良(あつなが)親王を出産します。 水野:道長は、天皇になる孫が2人もできて、最高権力者の栄華にのぼりつめていくわけですね。 スペースのリスナーさんから、彰子さまと一条天皇との愛が描かれている冲方丁さんの『月と日の后』がすごくいいですとご紹介いただきました。 たらればさん:冲方丁先生! そうですね、冲方先生の作品といえば、清少納言と定子さまを描いた『はなとゆめ』もおすすめです。にくいところを、非常に美しい筆致で書くなぁ、と思います。2冊ともおすすめでございます。
孫を天皇にしたい道長と、彰子さまは…
たらればさん:わたくしが注目しているのは、このあと彰子さまが政治的に成熟していくところです。 「光る君へ」の序盤で政治的な影響を多大に及ぼした、道長の姉・詮子さま(吉田羊さん)並みの活躍で、グランドマザーと称されていくわけです。 「女院」となったのは、東三条院・詮子さまが日本史上一人目。二人目が上東門院(じょうとうもんいん)・彰子さまです。この二人の(帝の後継者選び、人事や執政への直接介入などの)活躍が、「摂関政治」に続く「院政」を準備したと言われています。 水野:なるほど~。今は良好ですが、彰子さまと父・道長との関係も変わっていきますよね。 たらればさん:このあと、三条天皇の次の天皇はどうするかというと、いま育てている定子さまの息子の敦康親王にするか、自分が出産した息子・敦成親王にするか、ということですね。 水野:道長にとっては、自分の血を引く敦成を天皇にしたいわけですね。 たらればさん:彰子さまは、定子さまの遺児である敦康親王を推して、道長とバトルすることになります。 水野:「光る君へ」の道長は、とても優しいので……どんなバトルになるのか……。 たらればさん:彰子さまはとても長生きするので、愛する帝やわが子たち、孫の死も経験することになります。母・倫子さまも長寿ですが、長生きの血を受け継いでしまって…。 水野:それもつらい……。 たらればさん:幼くして亡くなるのももちろんつらいですが、見送るほうもつらいですよね……。 そうした中で、『源氏物語』をはじめとした、一条帝後宮サロンで生まれた作品の数々、『枕草子』や『和泉式部日記』、各歌人たちの歌集を、彰子さまのサロンが管理していたと言われています。 彰子さまが長生きして、守り続け、伝え続けてくれたからこそ、広まったし守られた作品がたくさんあったはずです。