社内での「聞いてない!」はなぜ起きるのか…上司と部下が「天の川の織姫と彦星状態」になる根本原因
■チャットツールを活用する 私が顧問をしている企業では、新たな案件が始まるとMicrosoft Teamsのチャット上にその案件名のチャンネルがつくられます。 メンバーはそのチャンネルに進捗状況を書く。誰でもいつでも情報を書き込める。マネージャーはコメントを見て、コメントや気づきを返信する。 報告・連絡・相談が日常的に、フラットにおこなわれる状況になっているのです。 マネージャーやリーダーは、そのチャンネルを見れば現在の状況を自分の都合のよいタイミングで把握できます。メンバーも、わざわざ報告しなくても、そのチャンネルで日々の仕事のやりとりがおこなわれていますから、マネージャーやリーダーに知ってもらえます。 ■すぐにでも実践できる お互い、わからない点だけ質問すればよいのです。TeamsやSlackなどのビジネスチャットツールを使っている職場であれば、すぐにでも実践できる方法です(もちろん、一定のテキストコミュニケーションスキルは必要であり、場合によってはその育成に時間とお金を投資したほうがよいでしょう)。 TeamsやSlackなどの案件チャンネルに、個人作業の備忘録を書き込むメンバーもいます。「備忘録」と書いて、何月何日までにこの作業、何日までにこの作業とメモを記入する。
■進捗状況が可視化される このやり方には4つのメリットがあります。 1つ目は自分自身へのリマインド効果。チャットを確認すれば作業の抜け漏れを防げます。 2つ目は他のメンバーとの連携。同僚が「備忘録」を見て、声をかけてくる場合があります。 例えば「このお客さん、私も接点があるので連携しませんか」といった形です。備忘録に関係者が「この指とまれ」する機会が生まれるのです。 そして3つ目は報告の簡略化です。わざわざ報告の時間をつくらなくても、進捗状況が可視化されます。 「いつ報告しよう/させよう」のような気遣いがなくなっていきます。 さらに4つ目、その人以外の人でも対応できるようになります。 例えば本人や家族の突然の体調不良などで、期日にその対応ができなくなった場合。備忘録程度にでも案件チャンネルに残しておけば、他のメンバーが引き継げたり、その備忘メモをお互い見ながらチャット、オンラインミーティング、音声通話などで他のメンバーにフォローをお願いしやすくなります。 ■報告しやすい仕組みをつくる マネージャーやリーダーは忙しいため、メンバーは報告のタイミングがつかめないもの。そのままではいつまでたっても情報共有の接点をつくれません。まるで天の川の織姫と彦星状態です。 「報告の時間」を設けたり、いつでも報告できる「案件チャンネル」をつくったりして、報告なる行為のハードルを下げましょう。 業務プロセスを見直して、お互いの立場をリスペクトする形に整えていく。報告しやすい仕組みをつくる。それによって、情報共有の遅れはなくなっていきます。 無駄ないざこざも起こらなくなっていくでしょう。 さらには「報告」なる上下関係を匂わす行為が、横でフラットに情報共有をし、解決する「相談」の文化に変わっていきます。 日頃のコミュニケーションの仕方は、ツールの使い方次第でも変わってくるのです。 ---------- 沢渡 あまね(さわたり・あまね) 作家/ワークスタイル&組織開発専門家 1975年生まれ。あまねキャリア株式会社CEO/株式会社NOKIOO顧問/浜松ワークスタイルLab所長/国内大手企業人事部門顧問ほか。「組織変革Lab」主宰、DX白書2023有識者委員など。日産自動車、NTTデータなどを経て現職。400以上の企業・自治体・官公庁で、働き方改革、組織変革、マネジメント変革の支援・講演および執筆・メディア出演を行う。『問題地図』シリーズ(技術評論社)をはじめ、『新時代を生き抜く越境思考』(同社)、『職場の科学』(文藝春秋)、『チームの生産性をあげる。』(ダイヤモンド社)、『仕事は職場が9割 働くことがラクになる20のヒント』(扶桑社)など著書多数。 ----------
作家/ワークスタイル&組織開発専門家 沢渡 あまね