12年間、不倫関係の社長から毎月20万円の手当を受けていた愛人…「贈与税の存在を知らなかった」末路とは
「愛人として援助を受けていましたが、贈与税の支払いを知りませんでした」ーーこんな相談が、税理士に無料で税務相談ができるQ&Aサービス「みんなの税務相談」に寄せられた。 相談者は、経営者である不倫相手から、マンション賃貸料・生活費として12年間、毎月20万円を受け取っていたという。不倫相手が亡くなり、妻の立ち合いのもと相続税の税務調査が入った際に不倫が発覚。妻から「あなたにも税務調査が入りますよ」と言われたという。 相談者は贈与税を支払わなくてはいけないことを知らなかったといい、税務調査が入ることを恐れているようだ。 贈与税は1月1日から12月31日までの1年間に、受贈者1人がもらった財産から、基礎控除額110万円を差し引いた金額に対して課せられる。 この相談者の例では、贈与税を申告・納税しなければならなかったわけだが、実際にはどのようなペナルティがかせられるのだろうか。藤井一弘税理士に聞いた。 ●贈与された金銭・財産を隠したら、最大40%の重加算税が課される場合も ーーこの質問者は12年間贈与税を支払っていませんでしたが、どのようなペナルティがかせられるのでしょうか。 「援助を受けていたお金がどのような性質だったのかによって、最終的な課税やペナルティ部分が違ってくると考えられます。 たとえば、病気などの理由で働けず、生活費に充当する収入を得ることができないため、その範囲の援助を受けているのなら、日常生活に必要な費用の『贈与』となります。 または、愛人契約にもとづき、サービスの対価として金銭の支払を受けているなら、『雑所得』や『事業所得』になると考えられます。 本ケースではそのどちらに該当するのかは不明ですが、単純に財産を形成した(名義登録が必要なマンションなどの不動産、車や金融資産を取得していた)のであれば、贈与税が課税される可能性が高いと思います。 その場合、本来の贈与税に加え、無申告加算税(調査前に自ら申告した場合や納税金額に応じて5~30%)延滞税(納付するまでの日数に応じて2.4~8.7%)がかかります。 また、もらった金銭や財産を隠したり、証拠資料を改ざん、偽装すると贈与税本税に対して最大40%の重加算税が課される場合があります。」 ●贈与税の時効は6年。場合によっては一括贈与とみなされるケースも ーー12年間申告していなかったら、どれぐらいの税負担となるのでしょうか。 「まず、贈与税には時効があります。起算日は贈与の年の翌年3月16日で、そこから原則6年(仮装・隠蔽の場合は7年)です。 今回のケースでは年間240万円の贈与なので、1年間の贈与税は13万円。つまり、まだ時効を迎えていない6年分=78万円が本来納めるべき贈与税額で、そのほかに6年分の無申告加算税と、期限内に納付しなかったことによる延滞税がかかります。 ●税務調査の対象となる可能性は高い。税理士に対応を依頼するのが賢明 ーー相談者にも、不倫相手の相続税の税務調査は来るのでしょうか。 「税務調査として来る場合は、亡くなった社長が愛人である相談者に対してどのような理由や方法で支払ったり贈与したかの反面調査や、相談者本人に対する直接の税務調査です。多くは、事前に預金調査や関係者からの聞き取り、証拠書類の収集がある程度なされてからの実地調査となります。 支払われた手当が、愛人の資産形成のためである(貴金属、ブランド品、家、金融資産、車、会員権取得などの名義登録が必要な財産など)場合は、調査対象になるケースが多いでしょう。 スポンサーである不倫相手が会社経営を行っていたり、何らかの事業を行っているのなら、その贈与資金がどう捻出されて、会社の経費として使われていたのかということも、調査のきっかけとなります。本調査されるとわかった場合には、すぐに専門の税理士を代理人として税務調査に対応させるべきです。 決して一人で対応しようとは考えないほうがいいと思います。ごまかしたり、先送りしたり、隠蔽しようとすると、かえって大きなペナルティがつく結果になります。」 【取材協力税理士】 藤井 一弘 (ふじい・かずひろ)税理士 税理士・行政書士として、デリヘル、キャバクラ、ホストクラブ等、ナイトビジネス経営者の税務顧問やコンサルタントを手がける。税務署・国税局の税務調査・査察関連の対応歴35年。調査立会日数は400日を超える。税務調査の立ち会いはもちろん、突然の無予告調査対応、納税額、納付計画の代理交渉の実績多数。また、性風俗営業・風俗営業の警察許可申請や風俗業者の社会保険手続の実績も多数有り。日々、全国からナイトビジネスについての相談が寄せられている。 事務所名:藤井一弘税理士事務所 事務所URL:http://www.deli-kaikei.com/
弁護士ドットコムニュース編集部