名目GDP、ドイツに抜かれ世界4位も 名目成長率で中国を上回り「伸びしろ」は大きい日本
30年間、名目GDP、国民全体の所得の総額がほとんど横ばいで、賃金も変わらなかったことが問題
飯田)名目の成長だと上がっているところがあるので、「物価の影響が大きい」と見る向きもありますが、いかがでしょうか? 片岡)確かに物価の影響は大きいと思います。ただ、ドル換算で見た名目GDPがドイツに抜かれたという話でしたが、日本人はほとんどドルの世界では生きていないので、別段心配することはないと思います。 飯田)円建ての世界で生きていますからね。 片岡)また、名目GDPの成長率は、水準で見るとドイツに抜かれましたが、足元の伸びは5.7%であり、中国の名目GDP成長率を上回っています。物価上昇の嵩上げはありますが、中国以上に名目GDPが伸びてきており、伸びしろは大きいですよね。 飯田)伸びしろは大きい。 片岡)なぜ名目GDPの水準がドイツに抜かれて4位になったかと言うと、過去30年間の長期停滞の影響が大きいのです。1990年代の初頭など、バブル崩壊前では世界ナンバー2の位置付けでした。しかし2010年辺りから中国に抜かれて、今回ドイツに抜かれた。なぜかと言うと、30年間ずっと名目GDP、つまり国民全体の所得総額がほとんど横ばいで賃金も変わらなかった影響があり、この問題を問うべきだと思います。
リーマンショック時も日銀だけ金融緩和を行わず、価格がまったく動かない経済になってしまった
飯田)過去30年間、「生産性が悪い」という話をよく聞きましたが、生産性とは何なのですか? 片岡)生産性というのは、人が同じ労働や設備投資などを投入して、どれくらいアウトプットが出せるかという指標です。日本の30年間の停滞を特徴付ける1つの要因はデフレです。バブル崩壊後、銀行や資産価格の問題などがずっと解決できず、景気が後退しました。そのなかで一生懸命、財政出動などを行ったのですが、なかなか上手くいかなかった。一方、金融政策ではバブル潰しに加担して、思い切って金利を引き下げるべきときに、それをしなかった。物価も「デフレでいいのだ」というような話も出てきて、2008年にリーマンショックが起きた。ここでも世界的に金融緩和が行われたけれど、日銀だけが金融緩和をしませんでした。 飯田)そうでしたね。 片岡)円高も進み、企業も外に出ていくなかで停滞が長期化し、日本経済の価格がまったく動かなくなった。価格を上げて売り上げを高め、付加価値を上げて生産性を高めるという、企業が普通に行っていることができない社会になってしまった。それが30年間の停滞における最大の特徴です。