トランスジェンダー選手の参戦で揺れる米女子ゴルフ界…来季までに規約見直しも「公正」なルールはないのかも【武川玲子コラム】
◇米ツアー見聞録 米女子ゴルフ界が“トランスジェンダー問題”で揺れている。発端はトランスジェンダーのヘイリー・デビッドソン(31)=米国=が米女子プロゴルフ協会(LPGA)ツアーの出場権を目指し2次予選会に出場していたこと。結果は95位と振るわず最終予選会へは進めなかったが、限定的ながら来季の下部ツアーの出場権を獲得した。 現在、LPGAツアー、全米女子オープン選手権を主催する全米ゴルフ協会(USGA)、国際ゴルフ連盟(IGF)は性別適合手術を行った場合に限り「出生時に女性であること」という条件を撤廃している。つまりトランスジェンダーも出場できるということ。が8月、これに反発する選手ら275人の署名が入った書簡が各機関へと送付され、撤廃を求めている。 トランスジェンダー問題を巡っては、多くのスポーツで異なる対応がされている。国際オリンピック委員会(IOC)は1月に指針を改定。以前は一定期間、男性ホルモンのテストステロン値が基準値以下であれば出場が認められていたが、これに「12歳になる前に性転換を完了した選手に限る」という基準が設けられた。が、それも各競技団体に最終判断は委ねられている。 デビッドソンはカレッジゴルフを男子としてプレーしていたが、2015年からホルモン治療を開始、21年にツアーが求めている性別適合手術を受けた。その後フロリダの女子ミニツアー(NXXT)に参戦し3勝、が同ツアーは3月にトランスジェンダーの出場を禁止、デビッドソンの参戦は閉ざされた。 書簡では男子ゴルファーは女子に比べて約30%増の飛距離を有する優位性があるなどのデータが示された一方で、「彼女より飛ぶ女子選手はたくさんいる」とデビッドソンを擁護する声も。LPGAツアーのサマーン会長は「公正な戦いの場を提供するため、来季までに規約を慎重に見直す」と回答した。どちらにも「公正」なルールはないのかもしれない。(全米ゴルフ記者協会会員)
中日スポーツ