株価低迷の日産はなぜ「ひとり負け」しているのか…?社員を苦しめる「ゴーン体制の負の遺産」の正体
失われたスピード感
さらに問題なのは、先にも触れたように、「決断が苦手」な内田社長にすべてを仰ぐ体制になっているため、あらゆる意思決定が遅れ気味になっているということだ。 こうした硬直的な意思決定システムも、社内では「ゴーン経営の負の遺産」と言われている。 ゴーン経営には功罪相半ばする面が多い。ゴーン氏は、重要な戦略は一人で決め、その計画を忠実に実行できる役員を引き上げた。しかしその結果、自分で判断できない「指示待ち役員」が増えてしまった。彼らがその後も役員に残り、内田氏にあらゆる判断を仰ぐため、経営のスピード感が失われているというわけだ。 とりわけ、その影響が大きく出ているのが貧弱な商品戦略だろう。このところ日産では新商品の投入が遅れる傾向にあり、それが他社に劣後する一因にもなっている。 2024年11月8日付日本経済新聞も「米国の日産の売れ筋上位10車種の発売時期をみると、22年と23年で合計1車種しか投入できていない。新車の刷新が遅れたことにより売れ筋モデルが減り、月販平均1000台以上の車種は14年の19車種から足元で12車種までに減っている」と報じている。この「1車種」とは、スポーツカーの「フェアレディZ」のことだ。
何も決めてくれない
日産のある現役技術者が、新車開発の内情についてこう語る。 「いま日産は新車の開発期間を30ヵ月に短縮する計画を進めていますが、現場には『これでも甘い』という問題意識があります。私が調べた限りでは、トヨタは24ヵ月以内で開発しているのですから。 日産の開発期間が長いのは、コスト削減のためにアウトソーシングを進めすぎたからです。もう少し『手の内化』を進めるべきだと具申しても、役員はなかなか決断しない。社内は改革を阻む障壁だらけです」 北米市場でEVシフトが一段落し、売れ筋となったハイブリッド車対応でも、日産には「e-POWER」と呼ばれるハイブリッド技術があり、それを北米市場向けに仕様変更すれば戦えるという声が現場から出ているのに、手を打つのが遅い。経営会議メンバーで開発部門を統括する中畔邦雄副社長についても、「何も決めてくれない人。業績低迷の戦犯の一人だ」と指摘する声がある。 現場社員の悲鳴を聞くにつけ、日産の業績悪化は、危機感に欠ける組織マネジメントに起因していると言わざるを得ない。経営危機の影が忍び寄り、ようやく内田氏も重い腰を上げ、来年1月と4月に人事・組織改革に踏み出すという。おそらく経営会議メンバーを一部入れ替えるのだろう。