2023年はAIの年だった、と言っても過言ではないだろう。この新しいテクノロジーの出現と急速な発展は、拡大と変化と混乱が相まって形作られている、デジタル領域を象徴するような存在にも感じられる。 一方で、デジタルの未来は不透明だ。市場におけるすべてのプレイヤーが、先の見えないなかでいかに足場を固め、次のステップへと進めるのか模索を続けている。DIGIDAY［日本版］恒例の年末年始企画「IN/OUT 2024」では、 DIGIDAY［日本版］とゆかりの深いブランド・パブリッシャーのエグゼクティブや次世代リーダーに2023年を振り返ってもらい、2024年に向けてどのようなチャレンジを企図し、次なる成長を実現しようとしているのか伺った。 株式会社文芸春秋にて、メディア事業局常務取締役を務める小濱氏の回答は以下のとおりだ。

──2023年に挙げたもっとも大きな成果はなんですか。

雑誌『文藝春秋』『週刊文春』『Sports Graqphic Number』の電子版サブスクが揃い、雑誌/電子版/Webの複数メディアをMIXするパッケージが可能になった。動画を展開できるデジタルメディアが増える一方、急成長しているオンラインカンファレンスではオフライン開催のリクエストも目立っている。 雑誌を基点とする出版社のメディア展開がコロナ禍のあいだに成長・拡大を進め、広告の枠を超えたビジネスの基盤が整ってきた。

──2024年に向け見えてきた課題はなんですか。

無料のwebサイトを支えるユーザーの広告視聴について、ユーザー自身の理解を得ることが課題のひとつだ。ログインや強制視聴が標準的なステップとして認識されることがポイントだと思う。 一方でオファーウォール導入によってユーザーの広告視聴を必須とすると同時に広告枠の整理を進め、より快適なweb体験を提供できる可能性が拡がった。よりよいweb空間構築のために、ユーザー、メディア、広告主それぞれが理解を深め寄与していくスキームを共有できるための条件を求めていきたい。

──2024年にチャレンジしたい取り組みを教えてください。

紙・デジタルに加え、動画への対応も進んで整ってきたアウトプットのチャネルを最大限活用するために、コンテンツのクオリティを向上したい。独自性の高いクリエイティブはもちろん、テーマ、コンセプトに磨きをかけてコンテンツの価値を最大化することが重要だ。 表現手法としては動画による多様な表現を開発し、まだ十分とはいえないSNSチャンネルの最適化を図る。また社会的課題に取り組んでいく提案を視野に入れて、出版メディアならではの存在感を示していきたい。 ・年末年始企画「IN/OUT 2024」の記事一覧 Edited by DIGIDAY［日本版］編集部