車いす利用者の“映画館の対応”めぐる投稿が議論に 「SNSで向けられる声は世の中と全く違うもの」過去に批判受けた当事者と考える“会話と手助け”
■批判受けた経験から「伝え方は大事」「“車いすの人”ではなく“その人”の話にすべき」
2人とも、車いすをめぐるSNS投稿で批判を浴びた経験がある。渋谷氏は永田町駅にエレベーターがなく、駅員が昇降機の操作に慣れていないなどの状況をYouTubeに投稿。さしみちゃんは駅エレベーターの順番待ちで抜かされ続けて乗れない動画を「車いす優先」とXアカウントに投稿し、どちらも注目された。 渋谷氏は当時を「感情論で発信して、相手方の気持ちを考えなかった」と振り返る。その経験から、中嶋氏の投稿は「言い方が間違っていた。全否定でなく、改善案を示せればよかった」と評価する。「伝え方は大事だと学んだ。数日置いて書くとか、読者がどう思うか考えるようになって、批判はあまりなくなった」。 さしみちゃんは「障害者に対する解像度が低すぎる。車いすユーザーには横柄な人も、気を遣う人もいるが、ひとくくりに『わがままだ』。“車いすの人”ではなく“その人”の態度や発信が問題だと捉えないと、議論が先に進まない」と分析する。「自分も感情的な発信をしたが、炎上だけで社会は改善しない。署名活動とか具体的なアクションにつなげないと、主張が正しくても、世の中には刺さらない」。
NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星氏は、2人の意見を聞いて「マイノリティーとされている人たちが冷静さを求められるのは悲しい。つらい思いをさせる社会の側がおかしい」と語る。「障害者にも性格が悪い人も、浮気する人もいるが、みんな一緒。社会構造からヘイトが生まれる。当事者は問題解決のために前へ進むが、その苦しさを一部の人に背負わせるのは残酷。本来は仕組みで共有するべきだ」とした。
■必要な手助けは、「合理的配慮の提供」義務化で変わる?
映画館では、どのように配慮すればいいのか。渋谷氏は「車いす席はスクリーンから近く、目線を上げないといけないのがしんどい。友達がいいと言ってくれれば、お姫様抱っこしてもらって、一般席まで連れていってもらう」という。 さしみちゃんは「脊髄に問題があり、首を真上に90分間見続けるのは厳しい。ゆっくりなら歩けるので、1人で杖や手すりで一般席へ行く。今回のことで『介助者なしで見ちゃダメ』などの対応に発展しないことを祈る」と心配する。