科特隊のメカとウルトラマンを当時スチール満載で網羅した写真集!
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──ウルトラマンシリーズの超兵器写真集は、超兵器に主眼を置くことが大きなコンセプトだったと思うのですが、今回は特例的な形なのでしょうか。 高島 確かに特例的な構成となります。今回で『ウルトラマン』~『ウルトラマンレオ』までの昭和のウルトラマン初期作品がコンプリートする形になりますし、ウルトラヒーロー作品としては原点である『ウルトラマン』の「超兵器写真集」を、これまでの同シリーズに見劣りしないボリュームで仕上げたかったのです。 ──写真はどういう基準でセレクトされているのでしょうか。 高島 1966年から1967年にかけて放映された『ウルトラマン』の制作現場で撮影され、60年近くの歳月を経た現在、円谷プロダクションの写真ライブラリーに残されているもの掲載対象にしています。おそらく70年代だと思うのですが、現在のように映像から高画質のキャプチャー画像を作れなかった時代に、出版物などへの使用のためフィルムからコマ焼きしたものも残されています。これまで他の作品では掲載しなかったのですが、本書に限ってはこういうものも残されています、という資料としての写真紹介も兼ねて載せました。メカではジェットビートル、小型ビートル、科特隊専用車、スーパーガン、スパイダーショット、マルス133はライブラリーに残されているスチール写真、プロップ写真はすべてを網羅しました。ジェットビートル、小型ビートルと怪獣が一緒に写っているスチール写真は厳選して掲載しています。 ──特殊潜航艇S号とベルシダーは写真が残っていなかった、とうかがいましたが。 高島 その2つは撮影現場で撮られたスチール写真が残っていないので、HDリマスター映像からのキャプチャー画像を中心に使って、機種を紹介するだけに留めています。科学特捜隊の主要な超兵器と銃器類を掲載するためですが、制作当時に撮られたスチール写真の掲載がメインです。またジェットビートルに関しては、スチール写真のページ構成上、少し空いたところにHDリマスター映像からのキャプチャー画像を使用して発進シーンと活躍場面も掲載しています。デフォルトの発進シーンを連続写真的に掲載したのは、過去の本と比べても最多カット数ではないかと思います。 ──写真はどのような状態で誌面にレイアウトされるのでしょうか。 高島 本書ではこれまで発行された関連ムック本の多くに見られるようなメカ本体だけを載せる切り抜き加工をせずに、可能な限り本体の周囲の状況も見えるようにノートリミングで、写真の原型のままを基本に掲載しています。発進、飛行、攻撃など動きが激しい場面を撮影した多少のブレがあるカットなども、特撮現場の臨場感を今に伝える貴重な写真記録として載せています。ウルトラマンとメカに特化した内容ですが、円谷プロの写真ライブラリーに残された貴重な『ウルトラマン』のスチール写真そのものについての記録も兼ねた本にしてみました。この点は、これまでの超兵器写真集よりも濃いと思います。またこれまで復刊ドットコムから発行の本で作らせて頂いた円谷プロ作品の超兵器やヒロイン写真集と同様に、モノクロページにはモノクロフィルムで撮影されたカットのみを掲載します。ただ、メカのスチール写真ではモノクロフィルム撮影によるものが残っていないので、カラーページだけの掲載です。その代わり、ウルトラマンと怪獣の戦いは、ここ十数年間に発行された最初の『ウルトラマン』の関連本に載っていないカットを多めに掲載することができました。 ──当時撮影されたスチール写真には、経年での痛みが発生しているものもあると思うのですが……。 高島 写真に付着したキズやゴミの除去、経年による退色、変色は無理な調整をしない程度に色調補正を施しました(この記事に掲載しているSAMPLE写真は補正前のもの)。この作業は本書のデザイナーさんがかなり時間をかけてやって下さり、ご苦労をおかけしました。同じ時に撮られた複数の写真を並べる場合、スタジオ内の照明などの条件、環境の違いなのかわかりませんが、彩度や色調が多少異なるもので、その違いの比較として載せるために、敢えて色調を合わせていないページもあります。細かい部分ですが、ムック本にありがちな説明文などの文字を写真の上に載せることはしていません。純粋に一つ一つの写真を誌面に残していく、という編集姿勢です。中には、紙焼きのスチール写真を板の上に置いて撮影した写真というものも残されています。そのような写真も周囲を切らずに、そのまま掲載させて頂きました。 ──これまでの本にあまり掲載されていなかったような写真も含まれるとか。 高島 初めての『ウルトラマン』が制作、放映されて以来60年近くが経つ中で、特に1977年末に朝日ソノラマから発行された初の子供向けではない本『ファンタスティックTVコレクション 空想特撮映像のすばらしき世界 ウルトラマン』以降、星の数ほどのムック本、書籍が発行されているので、完全にこれは未公開と言い切れないですが、珍しいカットも多数選んでいます。一例ですが、巻頭は青空の中を飛ぶようなジェットビートル(SIII号)というおなじみの単独カットにしていますが、これは13点ほどある全カットを載せました。また、スパイダーショットのプロップ写真のコーナーの後では、毒蝮三太夫さんが演じたアラシ隊員がスパイダーショットを持った貴重な単独カラー写真が10点ほどライブラリーに残っていたので、その全カットを掲載しています。ウルトラマンの単独カットもですが、メカや銃器類の写真については、それぞれの写真のテイク違いなどが残されている写真の数もできるだけ解説文に入れました。スチール写真の資料、研究、検証に近い内容になっています。 ──ウルトラマンの単独写真の掲載にも、独特の視点による構成が行われている、とうかがっています。また、怪獣との戦いの場面スチール写真は、どういう基準でセレクトされているのでしょうか。 高島 ウルトラマンの単独カットは、スーツのAタイプ、Bタイプ、Cタイプを区切って、様々な本などに使われている定番写真は珍しいテイク違いも含めてほぼ網羅しました。これは過去の『ウルトラマン』の関連本に無かった初の試みかと思います。スペースの都合もあり載せなかったものもありますが、それは近年の本にもよく載っているような2、3点くらいです。その部分の解説では載せなかった写真についてもわかりやすいように触れています。ウルトラマンの単独カットは1冊の本としては過去最多の掲載点数です。 ──大量の写真を掲載、整理した、まさに「資料」として使いやすい1冊になっているのですね。 高島 ですのでファンならずとも、例えば出版関係やキャラクター商品などの業界関係者の方がこの本を購入して頂ければ、この初めての『ウルトラマン』の写真を使うため、円谷プロから写真を借りる前にどんな写真があるのかをリサーチするのに活用できると思います。怪獣とウルトラマンとの激闘的なスチール写真は、80年代から最近まで発行された本作『ウルトラマン』の単独本で写真が多く載っている本をチェックして、それらの本に載っていないカットを選びました。載っている場合でも、トリミングされた状態をオリジナルと見比べて、原型のまま載せた方が良い写真はセレクトに含んでいます。なお、この際にチェックした10冊以上の出版物は、本書の巻末に参考文献として記載しています。 ──最後に読者へのメッセージを。 高島 他のムック本と比べて価格が高め設定なのは申し訳ないですが(苦笑)、それでも欲しい! と思ってくださる、初めての『ウルトラマン』が好きで仕方ないファンの方が手にして頂ければと思います。これまでのムック本では見られない編集内容ですし、また丈夫な厚めの紙を使い、物理的にも手応えのある作りになっている写真集ですので。
ライター ぬのまる