“隠れた報復”進むヨルダン川西岸占領地 聖地で探ったユダヤ人入植者の本音、なぜ土地に固執、過激化するのか?
今日のパレスチナ問題の元凶である大英帝国の二枚舌、三枚舌外交が絡む近代史を根拠にする部分は傾聴に値する。だが、旧約聖書を持ち出して入植を正当化する理屈には、到底納得できない。 これを認めてしまうと、時計の歴史の針を千年単位で巻き戻し現代の法的な“土地所有”を決めることになる。世界地図を破り捨てるがごとき、乱暴な理屈だ。 ▽垣間見た本音 こうした歴史観に支えられた入植者の行動で目立つのが、パレスチナ人の生活の糧を標的にしていることだ。例えば農家のオリーブ畑や家畜、かんがい施設。これらを失えば生活はたちまち立ち行かなくなる。なぜそこまでするのか? ガザでは昨年10月の戦闘開始から半年ほどで建築物の約50%が被害を受けている。ネタニヤフ政権は、ハマス壊滅や人質の全員解放を戦闘の目的とするが、それが達成された後、200万人を超える人々の生活をどう再建するつもりなのか―という問いには、一切答えていない。
フレイジャーら極右の人々に耳を傾けるうちに“本音”が見えた気がした。 そもそも再建する(させる)つもりが、ないのではないだろうか。 「ハマスを支持する住民たちはハマスと同じだ。ガザから追放し、隣国エジプトが受け入れればいい」。フレイジャーは自信に満ちた声で言い放った。「もっと激しくやっていい。水も食料もガザにやる必要はない。連中を飢え死にさせていい」 パレスチナの生存権の否定と言ってもいい。イスラエルの極右閣僚アミハイ・エリヤフ(エルサレム問題・遺産相)は、ガザでの核兵器使用すら「選択肢だ」と発言する。 いわゆる国際社会は、米国のバイデン政権を筆頭に、相変わらずイスラエルとパレスチナの「2国家共存」が和平の道だと唱える。しかし現場にあるのは、そうした理想論がうつろに響くほどの相互の憎悪と不信だ。 共存について、別のヘブロン入植者は「平和を守るならパレスチナ人と共存できる。しかしむこう側は、学校やモスクでユダヤ人を殺せと教えている」と疑心暗鬼を募らせていた。
フレイジャーも「もちろん平和を好み、法律を守るアラブ人とは共存できる。だが、できないのであればどこか他所へ行くべきだ」と語った。 共通するのは、イスラエル政府が押しつける差別的な監視社会を受け入れるのならば、という条件付きだ。それはハマスのテロを生み出した抑圧的な平穏を前提とした、偽りの共存に過ぎない。