“隠れた報復”進むヨルダン川西岸占領地 聖地で探ったユダヤ人入植者の本音、なぜ土地に固執、過激化するのか?
占領地への入植は国際法違反だが、ヘブロンを含め西岸には約70万人のユダヤ人が住んでいる。イスラエルの法律にも違反するのを承知で、勝手に家屋を建ててしまう確信犯も少なくない。 ▽歴史的正義 そんなヘブロンの旧市街でインタビューに応じたのが、「ヘブロン入植者協会」の幹部で国際広報担当、イシャイ・フレイジャーだ。年齢は40代後半で「ヘブロン・ユダヤ人協会」の幹部、広報担当も務める。イスラエル北部ハイファ出身で米国育ちのフレイジャーは、流ちょうな英語でユダヤ側の心情を語った。 彼はまずユダヤ人が抱く「恐怖」を強調した。 「イスラエルは、20を超えるアラブ国家の4億人超のアラブ人に囲まれ、おびえて生きている。これがわれわれの世界観だ。そして彼らはユダヤ人がイスラエルという国家を持つ権利すら否定、この土地から追い出そうとしている」。 イスラエルの人口は900万人程度で、40倍以上の人口を持つアラブ側にはイスラエルを敵視する勢力が少なくない。さらにホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)という悲劇の歴史や、計4回にわたるアラブ諸国などとの戦争を振り返れば、フレイジャーの言う恐怖心は、決して被害妄想ではない。
一方で、西岸のパレスチナ人(もちろんガザでも)は保健衛生から就業、土地の所有まで人生のあらゆる面で差別されて生きている。人権団体からは「アパルトヘイト(人種隔離)」と批判される状況が続いているのだ。人権団体の調査では、暴力事件急増の裏で立件されるのは、わずか6%だ。 こうした現実を前提に記者が「入植は国際法違反とされている」と指摘すると、フレイジャーは口角を少しばかり上げて鼻で笑った。 「そんな話は、ユダヤ人の立場を悪くするための冗談に過ぎない。ユダヤ人は(ユダヤ人の郷土建設をうたった)バルフォア宣言や国際連盟のパレスチナ委任統治に基づきここにいる」と話す。 さらに遠い歴史も重要だと言う。 「ユダヤ人は古代からこの地に住み、ヘブロンにも3000年以上前から住んできた。われわれはここに戻って、本来われわれの物(土地)を取り戻しただけなのだ。この地に住むのは歴史的正義なのだ」