世界初「バイク+クルマの同時開発」結果は惨敗! ノロくてオモチャっぽい“おまけバイク”モトコンポが、それでも世界を虜にしたワケ
実際売れたのはドッチ?
話を元に戻すと、こんな斬新なコンセプトで登場した「モトコンポ」+「シティ」だったわけですが、当時の日本のミニバイクシーンは、それまでホンダが席巻していたレジャーバイクシーンからレーサーレプリカなどのスピード感あふれる高性能バイクに流行が傾き始めた時代でした。 特にホンダとヤマハの間では「HY戦争」とも言われるほどの販売競争があり、市場はまさにカオスとなっていました。良く捉えれば、そんな中だからこそ斬新開発の「モトコンポ」の登場に至ったとも考えられますが、実際には「シティ」とセットとしたことで、当時のバイクファンからはそう支持を得ることができなかったようです。 当時、「モトコンポ」の売れ残りが続出したせいか、大幅なダンピングで売られているケースがありました。同時期、高校生だった筆者の同級生に「親がダンピングを受けて『モトコンポ』を不必要に買ってきた」という友達がおり、試しに一度「モトコンポ」にまたがらせてもらったことがありました。 当時筆者は「スーパーカブ」を愛用していましたが、「モトコンポ」は比べ物にならないノロく、まるでオモチャのようなバイクだったことを記憶しています。しかし、そのオモチャ感が当時でもチャーミングに感じ、同級生の間で「全然走らないけど、かわいいバイクだね」と笑いながらまたがったのも良い思い出です。 結果的に1982年に追加された「シティ」のターボ仕様以降、「車載できるモトコンポ」は謳われなくなり、結果的に1981年の鮮烈な登場からわずか4年後の1985年にはモトコンポの生産が終了しました。
じわじわ、じわじわ再評価!
しかし、生産終了から10年後の、90年代中半以降にジワジワと起こった「カスタムバイク」ブーム以降、この独創的な「モトコンポ」が再評価。まさかの「モトコンポ」のアメリカンカスタムなどもあり、この人気は現在も続いています。 また、2023年には「モトコンポ」のスピンオフ的モデルとしてホンダの電動スクーター「motocompacto」がアメリカで発売され、その斬新なコンセプトやデザインが大いに注目を浴びました。 これらから言えば「シティ」とセットで発売された当初こそ、結果が振るわなかった「モトコンポ」ですが、この独創性とチャーミングなところは、ユーザーの心をくすぐるものがあり「愛され続けるバイク」としては他車と一線を画すようにも感じます。 そして、バイクやクルマに限らず、多くの工業製品は独創的であればあるほど、後に再評価を受けたりプレミアムで高値となるケースは少なくありませんが、その代表の一つが「モトコンポ」のようにも思います。
松田義人(ライター・編集者)