「日本がダメなら海外へ」は通用しない…元・味の素マーケティングマネージャーが教える、海外ビジネスでの“勝ちパターン”
はじまりはヒット商品、それを生み出すのがマーケティング
では、アンゾフが言うところの「新製品開発」はどうでしょうか。 マーケティングの4Pというと、 (1)Product(製品) (2)Price(価格) (3)Promotion(プロモーション) (4) Place(流通) となりますが、特に大切なのは「並列の4Pではなく、独創的なProductを」という考え方です。 私が理想とするマーケティングは次のようなものです。 「『こういうものがあったら、このような行動が起こるのではないか』という仮説とかアイデアが、情熱とセットになった時、それは仕組み化して事業化できる。今までに見たことがない商品が世に生み出されることによって、新しいバリューチェーンをつくり出す。これが本来のマーケティングである」 その最も良い例がコカ・コーラです。コカ・コーラは元々エイサ・キャンドラー一族が経営していましたが、1919年にロバート・ウッドラフの父親が買収、ウッドラフに経営を任せたものです。当時のコカ・コーラは借金だらけの厳しい経営を強いられていましたが、ウッドラフは本格的にはじまったモータリゼーションの波に乗るべく幹線道路沿いの看板を買いまくり、コカ・コーラの商標のついたカレンダーやナプキンを全米中にばらまきます。 さらに第二次世界大戦中には、コストを度外視してどの戦地でも兵士が5セントでコカ・コーラを買えるようにあちこちの戦地に工場をつくります。結果、戦場では数々のコカ・コーラにまつわる伝説が生まれ、コカ・コーラのブランドは、世界一の投資家ウォーレン・バフェットが「一生持ち続けたい」と惚れ込むほどのものになったのです。 同じく圧倒的なブランドをつくり上げたのが日本の任天堂です。同社は元々はトランプや花札を製造するだけの会社でしたが、1949年に弱冠22歳で3代目社長となった山内溥さんが日本初のプラスチック製トランプやウルトラハンドといったアイデア玩具をヒットさせることで徐々に変貌を遂げ、83年のファミリーコンピュータの発売、85年のスーパーマリオブラザーズの世界的ヒットにより爆発的に成長しています。 両社ともそれまで世の中になかった製品をつくり、その独創的なプロダクトを広くお客さまに届けるために新しいバリューチェーンをつくり上げています。アップルの創業者スティーブ・ジョブズも、iPhoneやiPadなど次々と世界的大ヒット製品を生み出すことで同社を時価総額世界ナンバーワンの企業へと成長させています。こうした企業を見るにつけ、すごい会社をつくるためのはじまりはヒット商品であり、それを生み出すのがマーケティングだと私は考えています。