脱炭素ビジネス、東南アジアで商機…日本企業が技術前面に支援
日本企業が東南アジアで脱炭素ビジネスに力を入れている。東南アジア各国は二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスの削減目標を掲げるが、関連技術の蓄積は乏しい。日本政府も東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国が参加する国際的枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」を主導し、日本企業を後押しする。(バンコク 井戸田崇志、写真も) 【図表】さっと分かる…東南アジア主要国の温室効果ガス排出削減目標
潜在的需要
温室効果ガス排出量の算定システムを手がける新興企業「ゼロボード」(東京)は2023年3月、タイの首都バンコクに現地法人を設立して東南アジアに本格進出し、現在、約300社にシステムを納入している。電気使用量などを基に企業全体や特定の製品の生産に伴う排出量を算定する。
現地法人の鈴木慎太郎社長は「脱炭素化への対応を取引先の欧米企業から求められたり、株式市場に開示したりする必要が生じても、自社の排出量さえ把握できていない企業が多い」と、潜在的な需要は大きいと分析している。
IHIは、26年にマレーシアで燃焼時にCO2を出さないアンモニアで発電するガスタービンの商用運転を始める。インドネシアでも、既存の火力発電所の燃料を石炭からアンモニアに転換する技術開発を行う。
住友商事はベトナムで、再生可能エネルギー由来の電力の送電網を構築する実証事業に取り組む。出光興産は、マレーシアの国営石油会社と次世代航空燃料「SAF」の供給網を構築するために共同で検討に入っている。
目標
国際エネルギー機関(IEA)によると、22年のアジアのCO2排出量は世界全体の半分を占めた。特にASEANでは大量のCO2を排出する石炭火力発電所が総発電量の4割以上を占めている。脱炭素化は急務だが、外国の支援への期待が目立つ。
タイは30年に排出すると想定されている温室効果ガスを、脱炭素対策によって30%削減することを目指すが、海外からの技術投資が増えれば40%に拡大できるとしている。インドネシアも30年に32%削減を掲げるが、先進国などの支援が得られれば43%に引き上げる。